上記のロボットベッドは4099元(約6万3000円)、Xiaomiのパーソナルモビリティは1999元(約3万円)、追尾してくれるロボットスーツケースも同価格である。大物でモーター入りのロボットでもそんな価格でスタートアップが製造販売できて、もっとシンプルなIoTなら数千円で出てくるなら、どんな大企業とも勝負していけるだろう。だが、残念ながらそういうスタートアップ→クラウドファンディング→大成功してみるみる大企業へ というプロセスができているのは、今のところ中国(さらにいうと深セン周り)ぐらいだ。
また、マイクロプロセッサのCANAAN(北京)やESPRESSIF SYSTEMS(上海)、先ほど挙げたSiPEEDや日本でも大ヒット中の「M5Stack」など、コンシューマエレクトロニクスだけでない、もっと深い部分についてもスタートアップが出てきているが、ここでも中国の存在感が大きくなっている。
音楽デバイスや楽器など、趣味性が高い分野では中国以外のスタートアップも健闘している。先ほどリストアップしたうちのNuraLoopはオーストラリアの会社だ。また、fabcrossでも記事が出ているインスタコードのように、JENESISほか深センEMSの利用は、2015年当時よりも今の方が、知見がたまっている。とはいえ、ボリュームの小さいスタートアップの製品で、大企業とまったく同じ市場で正面から勝負していくのはつらいし、日本と深センの差が埋まったわけではないことは、このレポートに詳しい。
スタートアップは日本で量産できない——深センのジェネシスがスタートアップの駆け込み寺EMSになった理由|fabcross |
また、新著プロトタイプシティでは藤岡淳一さんがまるまる1章、製造についての事情を書いている。
これまでリストアップしたものは日本では合法的に使用できないものも多い。日本の家電量販店でスタートアップの製品の影は薄い。「Makerムーブメントは終わった」的な話を日本で多く聞くが、メイカースペースのビジネスモデル バブル期を越えてで書いたとおり、深センに住んで日々新製品に飛びついている僕が、いまひとつその感覚を共有できていないのは、そのせいじゃないかと思う。