複数の規格が入り交じるUSB Type-C。その挙動を探る【スマホ編】

複数の規格が入り交じるUSB Type-C。その挙動を探る【スマホ編】

スマートフォンやタブレットの充電コネクタは、これまでのMicroからじょじょにType-Cへの移行が進みつつあり、充電ケーブルをはじめとする市販のアクセサリも、それを反映したラインナップとなりつつある。今回はまず、前回も使用した両端Type-CコネクタのUSBケーブルを使ってスマートフォンへの給電を行ない、給電方法ごとの速度や特性の違いを探ってみよう。

使用するスマートフォンは、いずれもType-Cコネクタを搭載したSIMフリーのAndroidスマートフォン、ファーウェイの「HUAWEI nova」およびトリニティの「NuAns NEO [Reloaded]」の2台。前者は急速充電対応を謳っているが、あくまで「5V/2A」であり、同社のP10 liteのような「9V/2A」や、Mate 9の「5V/4.5A」もしくは「4.5V/5A」のような特殊な仕様ではない。前回紹介したUSB PD(USB Power Delivery)にも非対応だ。

後者はクアルコムの急速充電規格「Quick Charge 3.0」をサポートするが、Quick Chargeは電源アダプタ側と機器側がともに対応していて初めて急速充電が行なえる規格であり、今回使用する電源アダプタはいずれもQuick Chargeには非対応であるため、その恩恵は受けられない。USB PDにも対応していない。

電源アダプタは、前回も使用したMacBook Pro 15インチ標準添付の「87W USB-C電源アダプタ」と、Ankerの「PowerPort+ 5 USB-C USB Power Delivery」(最大30W)を使用する。どちらもUSB PDに対応した製品だが、今回はスマートフォン側が対応しないため、USB PDならではの高速充電は行なえない。

「HUAWEI nova」。2017年2月発売。本稿執筆時点のAndroidのバージョンは7.0Type-Cコネクタを搭載する。製品にはケーブルおよび専用のアダプタが付属するトリニティ「NuAns NEO [Reloaded]」。2017年6月発売。本稿執筆時点のAndroidのバージョンは7.1.1Type-Cコネクタを搭載する。製品にはケーブルのみが付属し、アダプタは同梱されない

複数の規格が入り交じるUSB Type-C。その挙動を探る【スマホ編】

ケーブルについては以下の表のとおりで、こちらも前回と同じラインナップ。本文中では冒頭につけた【AB】、【AK】、【E1】などの略称で表記する。なお測定にあたっては、スマートフォンのバッテリ残容量を揃えるのは難しいため、充電速度が比較的安定していると考えられる、バッテリ残量20-80%の範囲でテストを行なっている。

略称メーカー(ブランド)品番(リンク先は製品情報)長さ規格最大電流USB PDUSB IF認証その他Amazonで購入
ABAmazonBasicsAKL6LUC017-CS-R0.9mUSB 3.1 Gen 1表示なし表示なし--リンク
AKAnkerPowerLine+(AK-A8187091)1.8mUSB 2.0表示なし-PowerIQ対応リンク
CCable Matters107002-BLK-0.5m0.5mUSB 3.1 Gen 2表示なし表示なしThunderbolt 3 (40 Gbps)リンク
E1エレコムUSB3-CC5P05NBK0.5mUSB 3.1 Gen 25A-リンク
E2エレコムUSB3-CCP05NBK0.5mUSB 3.1 Gen 23A-リンク
E3エレコムMPA-CC13A05NBK0.5mUSB 3.1 Gen 13A--リンク
E4エレコムU2C-CC5P05NBK0.5mUSB 2.05A-リンク
E5エレコムU2C-CC05BK0.5mUSB 2.03A×--リンク
M丸七VM-070.5mUSB 2.03A×---

ではまずはHUAWEI novaから見ていこう。電圧についてはどのケーブルの場合も4.7~5.0Vの間を行ったり来たりしているため、以下では各ケーブルごとの電流(A)の値のみ記載している。

略称メーカー(ブランド)品番長さ規格最大電流USB PDUSB IF認証MacBookアダプタ利用時Ankerアダプタ利用時
ABAmazonBasicsL6LUC017-CS-R0.9mUSB 3.1 Gen 1表示なし表示なし-1.9~2.0A1.7~1.9A
AKAnkerPowerLine+(AK-A8187091)1.8mUSB 2.0表示なし-1.6~1.8A1.4~1.6A
CCable Matters107002-BLK-0.5m0.5mUSB 3.1 Gen 2表示なし表示なし1.9~2.0A1.8~2.0A
E1エレコムUSB3-CC5P05NBK0.5mUSB 3.1 Gen 25A1.9~2.0A1.7~1.9A
E2エレコムUSB3-CCP05NBK0.5mUSB 3.1 Gen 23A1.9~2.0A1.7~1.8A
E3エレコムMPA-CC13A05NBK0.5mUSB 3.1 Gen 13A-1.9~2.0A1.7~1.8A
E4エレコムU2C-CC5P05NBK0.5mUSB 2.05A1.9~2.0A1.7~1.9A
E5エレコムU2C-CC05BK0.5mUSB 2.03A×-1.8~1.9A1.6~1.7A
M丸七VM-070.5mUSB 2.03A×-1.7~1.8A1.4~1.6A

HUAWEI novaは上の表からもわかるように、MacBookのアダプタ、およびAnkerのアダプタ、どちらと組み合わせた場合も、給電は問題なく行なえた。基本的には「5V×2A」を上限に給電が行なわれており、MacBookアダプタを使った場合のほうが若干多めの電力が供給される傾向にある。本来、USB PDに対応しない場合はUSB Type-C Currentという規格が定める「5V×3A」が上限だが、HUAWEI nova自体が5V×2Aまでしか対応しないため、そこで頭打ちになっているものと考えられる。

ケーブル別に見ていくと、USB 2.0で3A対応の【AK】、【E5】、【M】の3製品が他に比べて0.1~0.2A低く、また電圧についてもほかが4.9~5.0Vなのに対して4.7~4.9Vとやや低めだ。USB 3.1対応の製品と比べて充電完了までの時間が大幅に変わるといったレベルではないが、傾向としては明らかに異なる。

ほとんどの組み合わせでは「5V×2A」に近い値で給電が行なわれる。これは【E1】の例USB 2.0で3A対応のケーブルは他に比べて電圧、電流ともにわずかに値が低い。これは【AK】の例ちなみにMacBook付属のUSB-Cケーブルを使った場合は、電圧電流が高い方のグループ、つまり【AB】、【C】、【E1】などとほぼ同じ値となる

次いでNuAns NEO [Reloaded]を見ていこう。こちらもやはり「5V×2A」を上限に、いずれのケーブルでも問題なく充電が行なえている。HUAWEI novaに比べると、アダプタおよびケーブルによる違いはまったくといっていいほどなく、HUAWEI novaでは電流、電圧ともにやや低かった【AK】、【E5】、【M】も含めたすべてのケーブルが、1.7~1.9Aの範囲内に収まっている。

略称メーカー(ブランド)品番長さ規格最大電流USB PDUSB IF認証MacBookアダプタ利用時Ankerアダプタ利用時
ABAmazonBasicsL6LUC017-CS-R0.9mUSB 3.1 Gen 1表示なし表示なし-1.7~1.9A1.7~1.9A
AKAnkerPowerLine+(AK-A8187091)1.8mUSB 2.0表示なし-1.7~1.9A1.7~1.9A
CCable Matters107002-BLK-0.5m0.5mUSB 3.1 Gen 2表示なし表示なし1.7~1.9A1.7~1.9A
E1エレコムUSB3-CC5P05NBK0.5mUSB 3.1 Gen 25A1.7~1.9A1.7~1.9A
E2エレコムUSB3-CCP05NBK0.5mUSB 3.1 Gen 23A1.7~1.9A1.7~1.9A
E3エレコムMPA-CC13A05NBK0.5mUSB 3.1 Gen 13A-1.7~1.9A1.7~1.9A
E4エレコムU2C-CC5P05NBK0.5mUSB 2.05A1.7~1.9A1.7~1.9A
E5エレコムU2C-CC05BK0.5mUSB 2.03A×-1.7~1.9A1.7~1.9A
M丸七VM-070.5mUSB 2.03A×-1.7~1.9A1.7~1.9A
HUAWEI novaの場合と同様、「5V×2A」に近い値で給電が行なわれる。これは【E1】の例HUAWEI novaではやや低めの値を示したUSB 2.0で3A対応のケーブルも、こちらでは他とほぼかわらない値を示している。これは【AK】の例MacBook付属のUSB-Cケーブルも同様だ

全体として、従来のUSBケーブルを使った場合との極端な違いは見られない。USB PDに対応してくればまた話は変わってくるだろうが、そうでない場合は単にコネクタの形状が異なるというだけで、従来のUSBと同じ使い方をしていればよいだろう。