採算が合わないんじゃしょうがない。
巨大ロボットの戦闘を大衆向けのエンターテイメントにした、スタートアップ企業のメガボッツ社。かつて日本の水道橋重工業が作った「クラタス」との巨大ロボ対決を果たし、自らを「クソロボットの女王」と名乗るシモーネ・ギールツさんとコラボした、あの会社です。
ですが彼らは今、破産申請前に資産を売却しているというのです。
悲しい動画が投稿される
月曜日のこと、彼らはYouTubeに動画を投稿し、最も目立つ資産である、15トンの「イーグル・プライム・バトル・メック」を売りに出すことを伝えました。そして何故、会社を畳むことになったのか? についても説明がありました。
未来は明るかったのに
2014年に会社が設立されたとき、共同設立者たちは、人が操縦する巨大なロボットが命がけで決闘する新しい形のスポーツを作ることを構想しており、報道機関はこれが「次の10億ドル級スポーツ・リーグになるかもしれない」と囃し立てていました。そして2015年7月、メガボッツは初の挑戦者に、日本のロボット企業である水道橋重工業が作った、重量約約5トンの「クラタス」を迎えたこともありました。
待ち望まれたその戦いは、最終的に2017年10月に行われ、バトル・マシーン国際リーグへの期待が高まりました。その当時、メガボッツ共同設立者ブリンクリー・ウォーレン氏はCNBCにこうコメントしていました。
私たちが確立しようとしているメガボッツ・リーグは、10年以内に世界の聴衆、収益、結び付きの点で世界のトップ3に入るスポーツになると思います
八百長が判明し、人々は興味を失っていった
ですがいくつもの勝負がガチではなく、演出・編集されたものだったことが明らかになり、人々は彼らの勝利を楽しむことが出来なくなってしまったのでした。
そしてメガボッツの共同設立者のひとり、マット・オーライン氏は、最新の動画でこのスポーツは彼が予想していたほど定着せず、またしても資金が底をついた、と説明をしています。
私はこれで儲けを出せずにいるんです
というオーライン氏。メガボッツ社は数年前に組んだローンに対して、これ以上利息を支払うことが出来なくなってしまったのです。なので会社は資産を売却し、破産を申請することに決めたのでした。
コストを回収できなかった
また説明によりますと、メガボッツがこの1年半の間で出演したり、運転させたり、販促品を売ったりしたお金は、ローンの利息、倉庫の家賃、健康保険、修理と整備費、そして彼自身の給料を支払うのに充分ではなかった、とも語られています。
加えて彼は、このスポーツを続けられるほど、消費者の関心が充分ではなかったとも考えています。彼の話では、YouTubeでの対日本戦の動画は最初の2週間で約500万の視聴数を獲得したものの、今年4月に公開された対カナダ戦は同じ期間で2万5,000しか行かなかったのだそうです。
これは、国家間の巨大ロボット対決への欲求 (あるいは大衆市場の欲求) がなくなったことを示す、非常に明確な兆候だと思います
しかし彼は、このスポーツの未来にまだ希望を持っています。
これは、実行できないという意味ではなく、私には成し遂げられなかったということです。私はこの灯火を渡すことが出来て本当に嬉しく思います
その灯火(つまりイーグル・プライム)は、eBayの競売を通じて渡すことになりました。その詳細には、「シボレー・コルベットに使われたLS3 V8エンジンによる430馬力、15トンのロボット」と書かれています。そしてロボットは座ると高さ3.5mで、立つと4.9mになる、とも。競売は1ドルから開始され、執筆時には93人からの入札で7万500ドル(約760万円)に釣り上がっていました。
送料はバカ高いが、稼ぐ金もバカデカい
イーグル・プライムは現在、カリフォルニア州オークランドに保管されています。オーライン氏は、西海岸への送料は約4,000ドル(約43万円)、東海岸への送料は約17,000ドル(約183万円)、さらに海外への送料は約5万ドル(約539万円)になるだろうと見積もっています。
彼はまた、幸運な勝者がこのロボットでいくらくらいのお金を稼ぐのかを発表しています。メガボッツのロボットは通常、個人的なショーで7,000ドル(約75万円)、法人顧客による音楽フェスやトレードショーなら15万ドル(約1,617万円)にもなるとのこと。しかしながら、国内で輸送にかかる費用は4,000ドル(約43万円)から35,000ドル(約377万円)もかかると書いています。
次の人に夢を託す
オーライン氏は、こうも話しています。
私は、誰かがこの巨大ロボットをライヴ・エンターテイメントとして使い途を見出してくれると思っています。
誰が競り落とすにせよ、これを実行して、本来あるべきクレイジーで素晴らしいものに変えるのに充分な商才を持っている可能性は充分にあると思います
個人レベルでの運用は難しそうですが、スポンサーを付けたり、企業がマスコット代わりに使ってくれるのが良さそうな気がします。果たして誰が競り落として、どのように使うのでしょうか?
Source: YouTube (1, 2, 3), engadget, BUSINESS INSIDER, Adratec, NEW ATLAS, eBay