中田ヤスタカのeGPUは、プライベートスタジオとモバイル環境を一発でつなぐ「命綱」

中田ヤスタカのeGPUは、プライベートスタジオとモバイル環境を一発でつなぐ「命綱」

環境というものを、自由に構築できる時代だからこそ。

2018年7月に発売された外付けGPU「Blackmagic eGPU」。我々ギズモード・ジャパンも試用してみましたが、編集部の仕事ではそのパワフルさを実感できず。まぁ基本テキスト作業ですもんね、仕方ないね。

そんなとき、中田ヤスタカさんがBlackmagic eGPUと2018年モデルのMacBook Proを導入したという情報を、Twitterで入手しました。発売直後も直後です。

新型Macbook Pro Black Magic eGPU #Apple#MacBookPro2018#BlackMagiceGPU#Studio#YasutakaNakata@Apple@Blackmagic_Newspic.twitter.com/IAcHVnZ4xf

— 中田ヤスタカ (@YNOFFICIAL_) 2018年7月23日

前回のインタビューからもひしひしと伝わってきたように、ギズモードも負けてられないほどガジェットに詳しい中田ヤスタカさん。なら、eGPUを導入したことにも深い意味があるに違いない! もう一度、話を伺いに行こう!

というわけで実現したのが今回の企画です。中田さんは3年前に、スタジオで使うPCをデスクトップからラップトップに換え、モバイルでも制作できる環境に移行。今回、スタジオにeGPUを導入したことで、スタジオとモバイルの制作環境はどのように変化したのでしょう?

音楽プロデューザーがeGPU、なぜ?

──そもそも、eGPU導入のきっかけはなんだったんですか?

中田ヤスタカさん(以下、中田):えー、いま噂にも出ている「Apple Thunderbolt Display」の新しいモデルが出ないからですね。Macと機材を接続するケーブルを減らしたい、っていうあの話ですね。

──おなじみのThunderbolt Displayの悩みですね(笑)

編注:前回のインタビューで、中田さんが2011年製のThunderbolt Displayを使い続ける理由として、Thunderbolt Display背面のThunderbolt 2ポートを使って、MacBook Pro→Thunderbolt Display→オーディオインターフェースをデイジーチェーン(数珠つなぎ)できるから、と語っていた。しかしThunderbolt Displayは最新のThunderbolt 3ではなく2なので、デンジーチェーンできない機材(MIDIキーボードなど)は別途MacBook Proのポートを占有していた。そのために、MacBook Proに2本のケーブルが挿さっていた。

中田:要は、ディスプレイから機材までをデイジーチェーン(数珠つなぎ)して、すべての機材とMacBook ProをThunderbolt 3ケーブル1本で繋ぎたかったんですよ。じゃあThunderboltのドックを買ったらいい話なんですけど、すでにあるドックを使うよりeGPUの変換のほうが綺麗に出力できるので、eGPUを導入しました。

中田:あとは本体の色ですね。今使っている新しい機材、全部スペースグレイに揃えたんですよ。オーディオインターフェースの「Apollo Twin」もMkIIになってスペースグレイになったんで。

──Magic Trackpad 2やMagic Keyboardもスペースグレイでしたね。

中田:2018年モデルの新しいMacBook Proもスペースグレイにしたんですよ。だから、新しい「Mac Pro」と同時に出るとうわさされている、新しいThunderbolt Displayがスペースグレイじゃなかったらどうしよう、って思ってます。

──実際にeGPUを導入してみて、制作の快適さなどは変わりましたか?

中田:えっと、良い点と悪い点があります。良い点は、現行のThunderbolt Displayの背面のハブって、USB 2.0なんですね。eGPUのポートはUSB 3.1なので、外付けの色んなデバイスを抜き差ししやすかったり、今使ってる新型のNative Instruments(NI)のキーボードがバスパワーにも対応したので、eGPUに接続するとシンプルに電源がとれます。Thunderbolt Displayに直接MIDIキーボードを繋ぐと、電圧が足りないんですよね。そして悪い点は、あんまりグラフィックの力を実感できてないところですね。根本的なことなんですけど。

──配線にはかなりこだわっているのですね。

中田:綺麗なほうがやる気でるじゃないですか。機材をどんどん減らしているので、そのぶん配線にこだわる余裕ができましたね。前はアナログやらデジタルやらLANケーブルやらが入り乱れてたので、見た目までこだわる気も起きなかったんですけど、今はモノが少ないので色を揃えたいとか綺麗にしたいとか、そういう気持ちがありますね。

今は「めちゃ高価なThunderboltドック」

──グラフィックの力を実感できていないということですが、eGPUが音楽制作に貢献してる部分ってありますか?

中田:僕が制作で使ってるDAWの「Cubase」は対応していないんじゃないですかね、聞いたこともないですし。GPUでレンダリングするDAWもないと思うし。

──となると、eGPUは音楽制作には貢献して、いない……?

中田:貢献していないですね。ただ、いま使ってるThunderbolt Displayの解像度はそんなに高くないけど、LGの「UltraFine 5K Display」みたいに高解像度のディスプレイに変えるなら、Mac本体に直接繋ぐより外付けにしたほうが良いだろうとは思います。新しいThunderbolt Displayも高解像度だろうし、そう思って先に導入してるっていうのもあります。

──たとえばソフトシンセではなく、オーケストラ音源のような大容量サンプルを読み込む時に影響が出たりとかは?

中田:ないんじゃないですか? そもそも、eGPUで味わえる体験は僕の気づかない範囲で起こってるかなぁ。あと、いま使ってるMacBook Proが最強スペックなので、eGPUとの差がそれほど顕著じゃないってのもあるかも。だから、現状としてはめちゃ高価なThunderboltドックになってるという。

──内心、そんな気はしていました(笑)

中田:「その使い方、eGPUのeGPUたる部分を活用していない」って、色んな人に言われるかもしれませんね。でも、じゃあこのグラフィックスパワーを試すためにGH5みたいな新しいカメラが欲しいなって気持ちにもなるし、新しいGoProもパワーが必要そうですし、そういうところで気持ちはあげてくれてます。

──eGPUでもサポートしているソフトがさまざまで、「iMovie」での4K書き出しはあんまりだけど「DaVinci Resolve」だと爆速になるとか、サポートに差がありますよね。

中田:DaVinci Resolveは自社ソフトですもんね。僕は動画編集には「Final Cut Pro X」を使ってるんですけど、プレビューは滑らかになった気がする。けど、あんまりスピードは体感していないですね。詳しくチェックしてないのでアレなんですけど。

あと「GoPro HERO7」とか、その次のHERO8とか、どんどん新しくなっていくじゃないですか。 次世代のカメラで、4K60pや6Kなんかが当たり前になったときに、eGPUがないと辛いだろうなって。 だから先に導入しておいたというのもあります。

それは近い将来のことだと思いますし、それくらいの頃に出てくるであろう5Kのディスプレイなんかは、直接Macに接続しないほうが良いだろうし。などなどの言い訳をしつつ、欲しかったから買ってしまいました(笑)。

中田さんからのコメント「後日、編集ソフトのDaVinci Resolveをインストールして使ってみているので、これからはちゃんとeGPUを活用できるかも? そして、インタビューの時点では発売されてなかったGoPro HERO7が4K60pの手ぶれ補正に対応されたので、4K60pで撮る機会が増えました。その編集を考えるとeGPU役割りとしては多くなったかもしれません」

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#gopro #ultra #ultrajapan

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ちなみに中田さんは熱狂的なGoProファン。GoPro HERO7が日本に5台しかない時点で、すでに持っていたほど

──買う理由を正当化するのは大事ですね(笑)

中田:外付けのGPUってどれだけ市民権が得られるのか、まだわからないところあるじゃないですか。音楽では外部DSP(digital signal processor、CPUに負荷をかけず音声のデジタル信号処理を行なう専用プロセッサ)があるので、外付けに処理を投げるのはよくある構造ではあるんです。でも汎用性に欠けるんですよね。UADっていうプラグインメーカーは専用ハードウェアが必要で、そこには「SHARC」っていうDSPが搭載されていてプラグインを動かすんですけど、UAD専用なんです。でも、GPUやCPUってそうした専用性がないじゃないですか。だから外付けのチップが市民権を得ていけば、色んな用途に使えるので良いと思うんですけどね。仮想通貨もGPU使ってるみたいですし、音楽もGPUで処理していけるようになれば、メーカーもそれをウリをできるんじゃないのかな。

ガジェットを試すのも、音楽を作るのも全く同じテンション

──すでに所有されている機材とeGPUの連携や相性はどうでしたか?

中田:特に問題はなかったですね。あ、でも、Apple Storeで売ってるから、ものすごい安定してるんだろうなーと思ってたらそうでもなく、eGPUのアンマウントに失敗することが結構ありました。外付けHDDを取り出す感覚で使えると思ってたんですけど、わりと取り出しに待ち時間があるんですよ。僕は頻繁に抜き差しするので、eGPUを使ってからはスリープじゃなくて電源を落とすようにしました。

──スリープだと復帰の際に接続がエラーになることがあるけど、リブートだと大丈夫、ということですね。

中田:そうです。eGPUにThunderbolt Displayを繋げているので、eGPUをアンマウントするとMacBook側に画面が移るんですけど、それまでけっこう時間かかるんですよね。それならシステム終了のほうが機器に優しいと思って毎回、電源を切っちゃってます。あとPCIの感覚と同じで、GPUに接続されているケーブルを引っこ抜くのって恐いじゃないですか(笑)。

──すごくわかります。抜き差しが多いということは、外出時だけでなく家にいるときもモバイル環境化することが多いということですか?

中田:そうですね。作業のとき以外は、MacBook ProはeGPUやディスプレイから外してるので。

──スタジオで使っているMacBookをそのままリビングに持って行って、ネットサーフィンすることも?

中田ヤスタカのeGPUは、プライベートスタジオとモバイル環境を一発でつなぐ「命綱」

中田:はい、全然ありますね。

──使っているMacは一台ですか? 二台持ちはしていないんでしょうか?

中田:他にもMacは持ってるんですけど、結局はメインで使ってるやつしか持ち出さない現象が起きて並列では使っていないです。「余ったMac 使い道」とかで検索しても普通な答えしか出てこないし(笑)。

一代前のMacは、メインマシンに入れるのが恐いソフトをお試しで入れたりしてるんですけどね。新しいOS入れるのもそっちで試したり。なので、使い分けって感じじゃないです。

──結局、使い分けって面倒ですしね。

中田:むしろ実験的な運用が好きですね。YouTuberでもなんでもないのに、GoProで2.7K60pと4K30pはどっちのほうが自分にとって大切なのか考えたり。「俺は動きを重視したいのか解像感を重視したいのか、いや4K60pでも撮れるけど手ブレ補正が効かないからジンバル使うか、いやジンバル使うとGoProの軽さの意味がなくなってくるし、どうしたらいいんだ!」みたいな。そんな悩みを日々抱えながら生きてるんですよね(笑)。

──(笑)

中田:自撮りなんてしないけど、インカメラの映る範囲はこれくらいかぁって確かめてみたり。でも、そういうガジェットを試すのも音楽を作るのも全く同じテンションでやってるので、たまたまそれが仕事になっているだけなんですよね。

モニターイヤホンとスピーカーの選び方

──eGPUをつかっていないとき、つまりモバイル環境での機材も気になります。中田さんはモニターの環境、どうされていますか? Shure(シュアー)のインイヤーモニター「SE846」を使っていると拝見しました。

中田:充分な音量を出せない環境ならイヤモニのほうが良いですよ。

──SE846で充分に作業はできますか?

中田:できますね。ただ僕はその環境だけで作らないので、SE846だけで全部の作業を完結させられますよ、という意味ではないです。スタジオに戻ればちゃんと確認できますし。

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#daw #macbookpro

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──自宅でガッツリ集中するのとは別に、自宅の70%くらいの環境をモバイルで実現できる、そんな時代になったなぁと思います。

中田:それはそうですね。今までモバイル環境だと、モニタースピーカーが一番の問題だったんですよ。っていうのも、スピーカーは大きくないと良い音にならない。それはもう空気の振動の問題で、絶対的に大きくて重いほうが良いんです。小さくても良いヤツはあるんですけど、それは小さいスピーカーのなかでは良いほう、っていう意味で、物理的に大きなスピーカーには勝てはしないんです。ただ、最近はそれが段々と優秀になってきてて。充分に音が出せないならこっちで良いって思わせてくれたのがイヤモニですね。

──小さいスピーカーを渋々使うなら、イヤモニが良いというシチュエーションもある、と。

中田:そうですそうです。スピーカーやヘッドフォンも選び方があって、スピーカーがメインの人のためのスピーカーか、ヘッドフォンを補完するためのスピーカーなのか。ヘッドホンがメインの人のためのヘッドホンか、スピーカーを補完するためのヘッドホンなのかで違う。僕が使ってるSE846は、イヤモニしかない、スピーカーが鳴らせない環境で制作しなきゃいけない人にとっては、投資(SE846は約10万円)しても良いんじゃないの?っていうイヤホンですね。

──なるほど。

中田:だからモバイルでは、どっちかというとSE846がメインです。いま持っている「iLoud Micro Monitor」は、イヤモニに合わせてスピーカーも持って行ける状況なら持って行きたいスピーカーなんです。逆にスピーカーしか持っていけないという状況なら、iLoudじゃなくて、GENELEC(ジェネレック、プロオーディオのためのメーカー)の一番小さいモニタースピーカーを持っていきます。出てる低音とか、作ってて確実に気持ちいいのはiLoudなんですけど、ちゃんと確認できるイヤモニがないなら、GENELECになる。

中田:そういう感じでイヤホンとスピーカーの組み合わせでいろいろと変わってくるんですよね。RX100を持ってる人にとってのスマホはカメラ重視じゃなくても良い、みたいな感じです。

──一発で理解できました(笑)

中田:デジカメを持っている人と持っていない人が選ぶスマホは、やっぱり違うじゃないですか。デジカメみたいなボケが撮れるカメラが欲しいのか、手軽に4K60pが撮れるカメラが欲しいのかとか。

今の環境はそうした役割分担の組み合わせなので、スピーカーの話だけ、あるいはイヤホンの話だけしたら伝わらなかったりするんですよね。なので、SE846も持ってますけど、一緒にEarPodsも持ち歩いてるんですよ、常に。

──へぇ、意外です。

中田:EarPodsって、何聞いてもEarPodsの音になるんですよ。だから確認としてはもちろん大事ですし、EarPodsの音って聞いてて気持ち良いんですよね。音漏れするインナーイヤー型としては驚異的に低音が出てると思います。

──今はiPhoneとEarPodsで音楽を聞く人が多い、という意識もあるんでしょうか?

中田:そこまで冷静に使っているわけじゃないですが、色んな聞くものを持っておきたいんですね。SE846とEarPodsはぜんぜん、音が違うんで。役割が違うというか、EarPodsの役割はどんなソースを突っ込んでもEarPodsの音にすることだと思います。業務用のモニターと家庭用のテレビで鮮やかさが違うとか、そんな感じです。リビングのテレビの役割はEarPodsだと思いますし、「4Kじゃなくても充分綺麗じゃん!」みたいに思わせてくれるのも大事ですね。たとえば新幹線でYouTuberの動画を見るときはSE846じゃなくてEarPods使いたいんですよ。

でも言うように、多分EarPodsって世界で一番聞かれている音ですよね。僕の曲も一番聞かれているのはEarPodsだと思います。そういう意味ではEarPodsが標準になっていますけど、EarPodsの音ってすごく特徴的なので、世の中の標準に対してはちょっと違うんですよね。でも、それが普通だと思って聞いている人がいるのも事実ですよね。1万円くらいのBA型のイヤホン買っても、EarPodsのほうがよく聞こえるっていう。それくらい特徴的。

──まさに何を重視するか、ですね。

中田:普段メインで使ってるGENELECの音に近い環境で聞けるのが理想ではあるんですけど、GENELECで聞きたくないときもあるんですよ。

レビューとか、4時間とかあるライブ音源を低音バリバリのGENELECで聞いてると疲れてくるから、そういうときはThunderbolt Displayのスピーカーアウトにして、音量3つ目くらいにして流しっぱなしにする方が楽。だから、やっぱり使い方ですよね。

イヤホンもキーボードも、すべては制作のための「拡張ツール」

──ちょうど、中田さんが作業環境をモバイルにし始めた2016年頃から、米津玄師さんやCharli XCXさんとのコラボなど、音楽的にも外に出ていくことが多くなったように感じています。モバイルに移行したのは、そういった制作スタイルの変化が関係しているのでしょうか?

中田:それは外というよりかは、音楽のために音楽をやりたいっていう思いが先にあったんです。ソロ活動とは言ってるんですけど、自分のために曲を作ってるんじゃなくて、音楽のために人を呼んでるという感じです。

──ソロ名義初のアルバム『Digital Native』のインタビューときも、仰っていましたね。

中田:作ってる曲に欲しい声があって、その曲のために参加してもらうという。もともとそういう感覚で曲を作ってたんだけど、たとえばメジャーデビューっていうのはそういうことじゃないとか、現実はそうでもないとか、いろいろあったんですけど、今はそういうやり方も違和感がない時代な気がしていて。

──それがたまたま環境をモバイルにした時期と近かった、というだけなんですね。

中田:モバイルで何か制作したいわけじゃないですよ。持ち運べる重さにしたい、っていうことなんです。固定のスタジオはあるけど、どこでも作業できるに越したことはないので。そこに戻らなくてもある程度つくれるっていう気持ちが大事だなと思ってます。学生のときは、プロといえば大量の機材とドッシリしたスタジオを持つイメージがあったんですけど、メインの場所から離れたら音楽と離れなきゃいけないっていうのも、なんか縛られてるなぁと感じてて。それで、Nintendo Switchスタイルにしたワケです。

──家ではテレビで、外ではポータブルで。

中田:だからサブとメインを分ける感覚、僕はなくなってきてますね。メインがどこでもできて当たり前っていう感覚は良いですよね。でも、PS4の遠隔起動も好きですよ(笑)。

──(笑)

中田:純正コントローラーがドングルになってるから、MacでもWindowsでも遊べるっていう。遅延はあるけど遊べる範囲ですし、スタジオで『ファイナルファンタジー』やっちゃいましたもん。

──環境はモバイルで。スタジオに戻れば、eGPU(Thunderboltハブ)につなげてもっとパワフルになるよという、そんな感じなのですね。

中田:そうそう。すべてが拡張なんですよ。音楽制作だってMacしかなくても、頑張ればステップ入力もできるし、内蔵スピーカーでも頑張れば作れる。けど、演奏のためのキーボードがあれば強化してくれてる。イヤモニ使ってもいいし、ちっさいスピーカー使ってもいい。けど、ちゃんとしたスピーカーもある。ただ、本体だけは変わらないってことが大事なんです。

eGPUを使いはじめてから、すべての機材とMacが一本のケーブルで繋がるようになったので、なおさら拡張感は強いですよね。ダーンと、一発で繋がるので。

オーディオインターフェースからMIDIキーボードなんかまで、一体のシステムに見えないような規模感の外部デバイスがすべて繋がっているのも面白い。MacBook ProとeGPUを切り離せば何一つ繋がらなくなるって面白くないですか?

──マジンガーZみたいですよね。パイルダーオンして大きなほうが動くというか。

中田:しかも、他の人のMacBookを持ってきても使えるというのもすごいですよね、専用じゃないっていう。

僕がいま理想としてるスタジオってそんな感じで、ディスプレイ、鍵盤、スピーカー、オーディオインターフェイスは置いてあって、Thunderbolt一本あればマシンとすべて繋がって、誰でもすぐに作業できる。そういう環境をいろんな場所に作りたいなって、思ってます。

というわけで、中田さんの制作環境において、Blackmagic eGPUは(今のところ)影響ナシ。ただし、ディスプレイやキーボードといった周辺機器との連携はスムーズになったようですし、これからもっとハイファイ化してくるであろう動画編集への備えもバッチリといったところですね。にしても「高価なThunderboltドック」というパワーワード。

でも、すべてが拡張という言葉は、すごくしっくりきます。デスクトップPCが一家に一台という時代でもありませんし、どんな要素をアップグレードさせたいかによって、好みの外部デバイスを選ぶ時代なのかなと。人によって、それが外付けディスプレイだったり、スピーカーだったり、ペンタブやプリンターだったり。なくても良いけどあると良い、そういうモノってありますよね。

特化さが求められると専用の装置なり場所を用意するというのは、思えば自然なことなのかも。パワフルさとポータブルさを両立させるヒントは、ここにあるのかもしれません。