PowerVision PowerEgg Xの見た目は、ほぼダチョウの卵。でも開くとたちまちパワフルなドローンに変身。登場した当初はソフトウェアの開発力不足が辛い時代もありましたが、状況は好転しています。新しいファームウェアがアップデートされるたびに、PowerEgg Xは安価で購入できる、最も賢く汎用性の高い商用ドローンのひとつに進化しています。日本語もサポートし、日本でも購入することができます。
PowerVision PowerEgg X
これは何?:ドローンに変形する卵、もしくは卵に変形するドローン。ハンディビデオカメラにもなります。
いくら?:エクスプローラ版:900ドル(約9万9000円)、ウィザード版:1,250ドル(約14万6900円)
好きなところ:コスパが良い。ウィザード版は付属品が充実しています。
好きじゃないところ:まともに動かすまでに大量のソフトウェアアップデートが必要。そしてまだ微妙に不具合あり。
これを作ったPowerVision社は中国・北京に本社を置く企業で、卵型ドローンのメーカーというよりも潜水艦ロボットで知られています。PowerEgg Xには2種類のラインナップがあり、安価なエクスプローラ版と、バッテリーや防水ケースなど、多くの付属品が充実しているウィザード版があります。
・PowerEgg X エクスプローラー版
このバージョンには、バッテリー1つ、予備プロペラ1セット、リモコン、カメラモードで使用するリストストラップ、三脚ヘッド、トラベルケースが付属。日本の価格は9万9900円です。
・PowerEgg X ウィザード版
このバージョンには、バッテリー2つ、予備プロペラ3セット、アームケース、水に着地できるフロート付きの防水ケースが付属。日本の価格は14万6900円です。
PowerEgg Xはカメラモードとドローンモードで使用することができます。カメラモードではバッテリーは約3時間半持続。
ドローンモード(プロペラが付いた状態)=ではバッテリーは30分持続します。バッテリーの容量は3,800mAhで、充電器には2つのUSBポート(スマホと、リモコンを同時に充電できる)がついています。
内部には、5コアのCPU、シングルコアのGPU、4コアのイメージプロセッサ、2コアのニューラルネットワークエンジン(AI関連機能に欠かせないエンジン)が搭載されています。ストレージは6GBの内部メモリに加えて、microSDカード(128GBまで使用可能)スロットがあります。
ドローンとスマホを接続するには、Vision+ 2というアプリを利用しますが、iOS版のみの提供となります。Androidで使いたい場合はPowerVisionのウェブサイトからAPKをダウンロードして手動でインストールするしかありませんが、このAPKは英語と中国語のみとなります。
カメラモード
「AIカメラモード」では、地上で非常に安定した滑らかな動画を撮影することができます。ハイエンドスマートフォンほどの動画クオリティではありませんが、動く物体を追従できる3軸ジンバル補正を搭載しています。
PowerEgg Xをカメラモードで使用するには、ハンドストラップを卵に装着して、本体のボタンを単押し1回、長押し1回でドローンの電源を入れます。続いてPowerEgg XのWiFiネットワークにスマホを接続します。PowerEggXは、最大60fpsの4Kビデオを記録し、最大12メガピクセルの写真を撮ることができます。
520グラムの重量はハンディカメラとしてはかなり重いですね。しかし、アプリからカメラを操作できるので、ドローンを平らな場所や三脚に設置し、離れた場所から操作を行なうことができます。また、AIで被写体を自動追尾するインテリジェントトラッキングシステムも使えます。
ドローン本体にはマイクは付いていませんが、「SyncVoice」というオプションがあり、スマートフォンから音声を録音し、動画ファイルとリアルタイムで同期させることができます。また、ヘッドフォンやスマホに接続されているマイクでも動作し、ドローン飛行中にも使用することができます。しかし、電波が弱かったり電波障害があったりすると音が途切れがちになるので、あまりお勧めできません。
自動顔認識+オートフレーミングを実現するオートコンポジション機能はかなり優れています。ドローンはディープラーニングのアルゴリズムで顔を認識しますが、顔以外でも、車などの動くものにもピントを合わせ続けることができます。一度ターゲットを検知すると(光の具合によっては時間がかかる時もあります)遠くに行ったり、他の物体の横を通り過ぎたとしても、見失うことなく追跡を続けます。しかし、フレーム内に物や人が多すぎると混乱しやすく、ピントを失うことがあります。
ドローンモード
プロペラを組み立てて展開すると、DJIの同価格帯のドローンよりも体積と重量があります。30 分間のバッテリー寿命は、DJIのMavic Air 2よりも少しだけ劣りますね。
PowerEgg Xは時速40マイルまでの速度に到達することができ、23マイルまでの風に耐えることができます。卵のかたちなのに、驚くほど安定して飛行していることに驚きます。
PowerEgg Xは、前面に2つのセンサー、底面に2つのセンサーを搭載し、着陸の際に安全なゾーンにドローンが配置できているかを確認します。障害物は19.8メートル(65フィート)先まで検出することができます。しかしこの障害物検出機能のアラート音はかなりうるさいです。(スマートフォンの音を切ったくらいです)。
4K動画のディテールは素晴らしいのですが、ダイナミックレンジや色の再現性、ホワイトバランスは光の加減で大きく変わります。アプリ上で手動で調整できますが、通常ドローンを飛ばしている最中にそこまでディテールにこだわっている暇はありません。
リモコンはかさばるし重いのですが、雨にも強く人間工学に基づいて設計されています。3本のケーブル(Lightning、microUSB、USB-C)とカスタマイズ可能なボタンが付属しています。信号の到達距離は3.7マイル(約5.9キロ)で、ドローンからの映像はフルHDでリアルタイムに送信されます。残念だったのは大きいサイズのスマートフォンはケースに入れているとリモコンのホルダーに収まらないこと。
PowerEgg Xは、バッテリー切れや信号が途切れた際には、GPS/GLONASS信号を使ってスタート地点に戻る機能を搭載しています。この機能を利用して、逆の使い方もできます。オービットモードでは、地図上に位置を設定し、そこにドローンを飛ばし周回させることができます。
また、カメラのフォーカスをターゲットに合わせて、決められた飛行をしながら小さなビデオクリップを記録する「クイックショット」機能を搭載しています。DJIのドローンも同様の飛行モードがありますね。
AI自動追尾、つまりインテリジェントトラッキングモードは、人や自転車、車などの撮影も非常にうまく機能します。動いているターゲットを後ろ、または平行の位置からドローンに追尾させることができます。この機能があれば、簡単にクールでクリエイティブな映像が撮影できます。
ウォータープルーフモード
ウィザード版のパッケージには透明なプラスチック製のシェルが同梱されてて、これをつければ防水仕様のドローンに変身させることができます。耐風性能と併せて、このドローンは強い雨風の中でも飛ぶことができる、とPowerVision社は謳います。筆者はコスタ・デル・ソル(スペイン南部の日当たりの良い乾燥した地域)に住んでいるので、雨の中の飛行をテストすることはできませんでしたが、プールの近くでドローンの離着陸を試してみました。
ウィザード版には、防水シェルに加えてドローンの足に装着する2つのフロートアクセサリーが付属しています。水面からでもドローンを離陸させることができ、水没を恐れることなく撮影できます。…が、ジョイスティックを使ったそれなりの操縦スキルが必要です。水面も滑走できるのは非常にクールですが、ウォータープルーフモードはPowerEgg Xの重量を増やし、バッテリーの寿命を短くします。そしてアプリは追加された重量を検出するとドローンの速度を制限し、AIによるインテリジェントな飛行機能を無効にしてしまいます。
防水シェルは何度水に浸かっても耐えてくれましたが、濡れれば濡れるほどカメラの前に結露が出てしまいました。さらに、ドローンの4本の脚のうち3本が外れてしまい(フローターを装着している間に起きたと思われる)、正しくフィットしなくなってしまいました。気をつけてください。この脚は壊れやすいです。
写真・セルフィー
PowerEgg Xは1200万画素センサーと27mm f/1.8のレンズを搭載し、視野角は170度です。
空撮には良いのですが、実際に使ってみてわかった問題点は、短い距離のピントが苦手なこと。被写体が1メートル弱離れたところにあってもピントが合いにくいことがありました。
カメラモードでは、PowerEgg Xは一部のジェスチャーを検出できます。 手のひらを掲げると、AIトラッキングを有効にできます。これにより、手のひらを掲げた人に対して自動追尾がオンになります。また「OK」のジェスチャー(親指を立てる ジェスチャー)で、3秒後に集合写真を撮影するなどの機能もあります。
バッテリーを一つで運用する場合、ドローンの飛行中に写真や動画を切り替えて撮影するのは現実的じゃありません。4Kで動画を録画し、動画からスナップショットを切り出すのが一番ストレスが少ないと思います。ディテールとコントラストにこだわりがなければ、インスタグラムにUPするくらいなら問題を感じません。
タイムラプスとスローモーション
最後に、PowerEgg Xは、3、5、7、10、15、30、60秒のタイムラプス(空からまたは地上から)を撮影することができます。120fpsのスローモーションで動画を記録することもできます。が、映像のクオリティは期待しないでください。
READ ME
・卵のような形をしていますが、使うためには毎回組み立てる必要があります。
・ドローンだけではなく、ハンドカメラとしても使うことができます。
・4K、60fpsで撮影可能です。さらにスマートフォンから入力した音声を動画に追加することができる独自機能があります。
・滑らかで安定した飛行を保ち、障害物を検出します。バッテリーもちも悪くありません。
・常にアップデートを通じてスマートモードが追加されどんどん改善されています。
・人や車を見失うことなくトラッキングします。