2007年に米国で初代iPhoneが発売されて、今年で10年を迎える。この10年のスマートフォンの普及には目を見張るものがあるが、その一方で、スマートフォンが普及した10年間の影響で、大きく変わったのではないかと言われるものもある。たとえば、そのひとつとして、PCが挙げられる。
スマートフォンが生まれてきた背景を考えると、この10年近く、PC市場が苦戦してきたというのも理解できる。元々、PCが普及したのは「インターネット」という楽しみや利便性があったからで、インターネットで提供されるサービスやコンテンツの進化と共に、その周辺のサービスも大きく変化してきた。
たとえば、固定回線では必要なときにインターネットに接続していたものが、ISDNからADSL、光回線へと進化を遂げ、常時接続や大容量のデータ通信が可能になったことで、利用シーンも一気に拡大した。モバイル環境についても1990年代後半までは通話中心だったが、2000年以降はiモードをはじめとした「ケータイ」による「手のひらのインターネット」が一気に普及した。
WAPなどで同様のサービスを普及させようとした欧米市場は、残念ながらモバイルインターネットがうまく普及しなかったが、スマートフォンはスムーズに受け入れられ、一気に普及が進んだ。国と地域によって多少の差異はあるものの、スマートフォンが可能にした「いつでもどこでもインターネットが利用できる」という環境は、私たちの生活やビジネスのスタイルを大きく変えることになった。
こうなってくると、それまでインターネットの利用に必要とされてきたPCの位置付けは、ちょっと微妙になってくる。たとえば、Webページの閲覧やメール、オンラインショッピング、SNSといった用途はスマートフォンで済ませられ、PCの出番はオンラインゲームや文書作成、画像処理、映像編集といったパフォーマンスが必要とされるものに限られてくる。しかもこれらの多くはクリエイターを中心としたユーザーの用途であり、一般的な個人ユーザーの用途としては、それほど優先順位が高いものではなかった。
最近、メディアでは若い世代のPC離れやスマホ依存が話題として取り上げられることが多く、「今年の新人はPCのキーボードが遅くて……」「大学の論文をスマホの入力したっていう学生がいるらしいよ」といったエピソードも伝えられるが、真偽のほどはともかく、そういうことが話題になってしまうほど、「スマホあるから、PCは……」といった認識が広まってきているようだ。だからと言ってPCが不要かというと、決してそうではない。PCだからこそ楽しめるコンテンツや活用できる用途もたくさんあり、PCを使うことで広がる世界も数多くあるはずだが、それがうまく浸透していないのかもしれない。