イーロン・マスクからベゾスまで。気候変動嘘つきさんたちまとめ

イーロン・マスクからベゾスまで。気候変動嘘つきさんたちまとめ

生命を脅かすほど切迫した気候危機の中で、温室効果ガスで地球を汚染することはやっちゃいけないことです。しかし、その汚染に責任を持つ人々や企業の中には、自分たちをまるで気候変動のヒーローかのように見せかけようとしている者もいます。こっそり地球を壊すために、地球に優しい言葉で2020年を乗り越えちゃった人たち。2020年を飾った最大の気候変動のうそつきさんたちをEartherのDharna Noor記者が紹介してくれています。

ジェフ・ベゾスとAmazon(アマゾン)

えっと、Amazonは真の気候変動のヒーローです。最近では、米政府にパリ協定復帰を要求する書簡に署名しました。これだけではありません。2020年の初めには、段階的な炭素汚染の削減という新たな公約を発表し、クリーンエネルギーのベンチャーキャピタルに20億ドル(約2,080億円)を拠出しました。さらに、創業者のジェフ・ベゾス氏は100億ドル(約1兆400億円)の気候基金を設立し、アメリカの慈善家が気候変動対策に費やす総額を事実上2倍に押し上げました。さらにさらに、ワシントン州シアトルにあるアイスホッケーの競技場を「気候誓約アリーナ(Climate Pledge Arena)」と名付けちゃいましたよ。もうすごすぎてしんどいんですけど。

でも、ここで問題なのは、一見良さげな取り組みが実際はまったく意味をなさないということです。Amazonとベゾス氏は自社の活動がいかに持続可能であるかを自慢する一方で、テクノロジーを駆使して石油やガス企業がより効率的に化石燃料を採掘できるように支援を続けているんだとか。あかんやん。

ベゾス氏の気候基金にも問題があるそうですよ。昨年2月に書きましたが、気候変動を億万長者に頼って解決してもらってはいけません。富裕層が税金を払えばいいだけなんです。そうすれば気候変動を民主的に解決できます。一方、Amazonのベンチャーキャピタル基金は、良いことをしそうな感じの会社に投資してはいるものの、もしもそれが当たったとしても、より多くの富が少数の手に渡ってしまうことになりかねません。本当の気候変動対策は化石燃料産業を終わらせることのはずなのだけど、Amazonが取引している石油・ガス企業の利益に反するような投資をすることなんてほとんどないと思われ……。

Amazonは世界で最も地球を汚染している企業のトップ200にランキングされていますが、同社のプレスリリースにはそんなことは書かれているわけもなく。そして、そういう矛盾を指摘しようとする従業員に対して、同社は非常に敵対的な態度をとってきました。どうか、この気候変動うそつき企業からお金と権力を奪ってください。

ExxonMobil(エクソンモービル)

Exxonにとって2020年は良い年ではありませんでした。昨秋、Exxonはアメリカ最大のエネルギー会社の座をChevron(シェブロン)に奪われちゃいました。Exxon王国崩壊。そしてその直後にはExxonのアナリストによって同社が3四半期連続で財務赤字に直面していることが明るみに。漏洩した文書によると、アナリストは、新型コロナの影響による石油の暴落によるダメージから回復することはないかもしれないと考えているそうですよ。落ち込んでいる会社に追い打ちをかけるのはちょっとどうなのとは思いますが、株主を守るために従業員を切りまくったんだから自業自得かも。

Exxonが2020年に「気候変動のリスクは現実」と初めて認めたうえで「解決策の一部になることを約束」したのも、メタンの排出量とガスの使用量を減らすと公約したのも事実ですけど、同社の行動を見ていると言ってることとやってることが逆なんですよね。

昨年10月に流出した内部文書によると、Exxonは今後5年間で炭素汚染を17%増加させる計画なんですって。は?って感じですよね。増加分は、ギリシャ全土の年間排出量に相当するのだとか。また、2020年の報告書によると、Exxonは2019年に気候科学否定派8団体に69万ドル(約7,150万円)を寄付しています。これ、2018年から10%しか減っていないそうです。気候変動の解決策の一部になる企業の適正な寄付額は、もちろん0ドルですよね。ダメダメです。

そもそも化石燃料は地球を温暖化させているのだから、気候にとってプラスになる石油会社なんてありません。昨年9月の調査によると、Exxonの気候変動対策プランは、大手化石燃料企業の中でも最悪だったんですって。

調査を行なったオイル・チェンジ・インターナショナルのエネルギー移行・先物チームで上級キャンペーンを担当しているデビッド・トン氏は、「ExxonMobilの主要事業は、気候危機の原因となっている化石油とガスの生産と販売であり、同社の上層部がすぐにその方針を転換する気配はありません」と述べています。パリ協定の目標を達成できた石油企業はありませんでしたが、トン氏の言うとおり「ExxonMobilは悪党の中でも最悪の存在だった」だったようですね……。

イーロン・マスクからベゾスまで。気候変動嘘つきさんたちまとめ

Coca-Cola(コカコーラ)

自然環境にとってCoca-Colaは悪夢です。年間約330万トンにも及ぶプラスチック包装の生産と廃棄によって、温暖化と健康被害の原因となる何億トンもの汚染物質を世界中の大気や水路にまき散らしています。しかも去年は、その事実を隠そうと懸命に努力したとのこと。ちっともスカッとさわやかCoca-Colaじゃないじゃん。

気候変動対策の主要な機会であるはずの世界経済フォーラムの冒頭で、同社のサステナビリティチーフは、製品に使い捨てプラスチック容器の使用を続けるだろうと述べました。しかも大胆にも、それがビジネスモデルを維持するための判断ではなく、「消費者がプラスチック大好きだから」と言い放ったそうですよ。いや、消費者はプラスチック離れを望んでいるんですけど……。

それからというもの、Coca-Colaが力を入れているのは中途半端な対策ばかり。同社は2022年までに、世界18カ所の市場でリサイクルプラスチック100%の包装を展開し、EU市場すべてとスイスで缶とボトルのホルダーをプラスチック製から紙製に切り替えるとのこと。まあいいことではあるんですけど、世界がこれ以上環境汚染なしにプラスチックを扱えなくなってるという問題の核心にはたどり着いていないんですよね。問題はそこじゃないっていうかなんというか……。

米Greenpeaceで海洋部門のキャンペーンディレクターを務めるJohn Hocevar氏は、メールでこう伝えています。「海と地域社会の健康を守るためには、使い捨てのプラスチックから離れなければならないことは科学的に明らかなのに、Coca-Colaはいまだにペットボトルの生産数を増やし続けています。年間約1,100億本のプラスチックボトルが、数分使って捨てられるために生産されているんです」

ほぼほぼ焼却炉か埋め立て地行きになるペットボトルは、地球温暖化や健康の脅威となる排出物を生み出しています。それ以外は高速道路の脇から海の真ん中に至るまで、あらゆる場所にゴミとして捨てられることが多いようです。Break Free From Plasticが昨年12月に発表した調査で、Coca-Colaは「世界を最もプラスチックで汚染しているブランド」に選ばれました。しかも3年連続 。もはや向かうところ敵なしっぽいです。この調査では、世界各地で発見されたプラスチック廃棄物のブランド名を特定し、数を記録。55カ国で集めた346,494個のプラスチックのうち、コカコーラのものは51カ国で13,834個だったらしく、2位と3位の汚染企業を足してもこの数には及ばなかったそうです。圧倒的じゃないかCoca-Colaは……。

使い捨てプラスチックの使用を続けているから、こんなことになっちゃってるんですよね。2019年10月の時点で、同社のペットボトルのリサイクル率は約9%だったそうなんですけど、その数字に変化はなさそう。たとえリサイクルされたとしても、遅かれ早かれ燃やされるか捨てられる運命です。使い捨てプラスチックが2回以上リサイクルされることはほとんどないんですから。 環境保護主義者たちは、Coca-Colaのプラスチック汚染をやめさせようと必死になっています。昨年2月には、汚染地域の浄化費用の支払いと、実際には多くがリサイクルされていないことを理由に「リサイクル可能」という表示の禁止を求めて、PepsiCo(ペプシコ)やNestlé(ネスレ)のような他の主要なプラスチック汚染企業とともにCoca-Colaを訴えています。さて、どうなりますことやら。

Tesla(テスラ)とイーロン・マスク

ソーラーパネルや電気自動車を生産しているおかげで、Teslaは環境に優しい企業っていうイメージがあるかもですが、だまされてはいけません。実のところ、Teslaは「気候変動うそつきさん」の定義のような企業です。

言うまでもなく、クリーンな電力は絶対に必要です。しかし、クリーンエネルギーを生産する際には、生物多様性や人々に害を与えないように注意する必要があります。

シンプルに、Teslaは適切な配慮を行なっていません。2016年のワシントン・ポスト紙の記事によると、Teslaのサプライチェーンは、中国からの黒鉛、そしてアルゼンチンとコンゴ民主共和国からのリチウムとコバルトに依存していて、いずれも環境汚染が問題になっています。こんなの持続可能な企業経営とはいえませんよね。

それから、Teslaといえば電気自動車です。確かに、電気自動車はディーゼル車よりも地球に優しいかもしれませんが、充電に使用する電力の大部分はまだ化石燃料由来です。なので、今のところ最も持続可能なEV技術の使い道は、電気自動車ではなく公共交通機関で多くの人を運ぶことなんですよね。そうすれば炭素汚染を減らすことができます。

しかし、マスク氏は公共交通機関を好ましく思っていません。というか、批判的です。Teslaは、約5,000万ドル(約52億円)の資金を得て、ロサンゼルスの地下につくったトンネルで短い距離を走る公共交通機関チックなものを開発しています。でも、基本的に地球に優しいバスや電車じゃなく、車での移動を奨励するようにデザインされているらしいですよ。

マスク氏は、車による移動を促進することで、道路が増えるのを暗に支持していることになっちゃいますが、新しくつくられた道路は人々によって埋め尽くされるという研究結果があります。そうなると、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量が増えるうえに、自動車による大気汚染も起こってしまいます。研究によれば、道路自体も大気汚染の原因になるそうです。もう踏んだり蹴ったりです。

さらに、Teslaの労働者に対する待遇のひどさも問題になっています。昨年の初め、新型コロナの感染が急速に拡大していく中で、操業停止命令を無視しました。また、Teslaの労災件数は平均以上なのだそう。Teslaはその問題を解決済みと主張してるんですけど、報道は真逆。組合を結成してひどい待遇を改善させようとする従業員に対し、マスク氏はありとあらゆる手段でそれを阻止しようとしています。従業員にこんなひどい扱いをする企業が持続可能なわけがありません。 2021年に入ってからもマスク氏は最も優秀な炭素回収技術に1億ドル(約104億円)の賞金を与えると宣言するなど、税金を納める以外の方法で気候変動対策にいっちょかみしようとしているようです。

Google(グーグル)

Googleは、人々から環境に優しい企業だと思ってほしいと本気で願っています。そのために幹部たちは、テック業界の持続可能性について議論を重ねています。また、同社は政府高官にパリ協定への復帰と気候変動政策の実施を求める書簡に署名しました。そして2020年9月には、同社は「カーボンニュートラル」であると主張しています。

ところが、その裏でいまだに何百万トンもの温室効果ガスを排出しています。では、Googleは何を根拠にカーボンニュートラルだ、持続可能だと主張しているのかというと、炭素汚染を引き起こす一方で、エコなプロジェクトに資金を提供しているからなのだとか。主に養豚場や埋立地から漏出しているメタンガスを回収することで、自社の汚染を帳消しにして、気候変動を悪化させている罪悪感をちょっとだけ和らげようとしているようです。メタンは確かに問題ですが、他の場所でそれを削減したところで、Googleが排出した温室効果ガスが消えてなくなるわけじゃありませんよね。

9月に発表した計画で「環境への影響を減らすために都市や企業を支援したい」とも述べていたGoogleが何をしたのかというと、自社製品の売りつけでした。他社の自然エネルギーへの移行に乗っかって利益を得ようという算段のようです。

古い人間だと思われちゃうかもですが、クリーンエネルギー革命によってただテック企業をボロ儲けさせていいとは思いません。そのかわりに課税しましょう。そうすれば、より民主的な方法で脱炭素化できるってもんです。