カリフォルニア州が悪意あるディープフェイクの利用を禁止。大統領選を見据えて

カリフォルニア州が悪意あるディープフェイクの利用を禁止。大統領選を見据えて

悪意がなければOK。でもその線引は…?

2020年の大統領選挙を妨害するためにディープフェイクが利用されるのではないか? という懸念が高まる中、カリフォルニア州が政治的な動機に基づいた使用を禁止する州になりました。

悪意ある政治利用も、同意のない制作・拡散も禁止

木曜日のこと、カリフォルニアのギャビン・ニューサム州知事はAB730法案に署名し、政治候補者の偽装された動画、音声、または写真を作成または配布することを違法としました。

彼はさらに、AB602という法案にも署名をしました。それはカリフォルニア州の住民が、法的同意を得ることなく、ディープフェイクのポルノ・コンテンツを配布した者に対して法的措置を執ることを認める法案となっています。

でも調べたら政治的なものはほぼなかった

サイバーセキュリティー企業のディープトレース社が発表した、ディープフェイクについての新しい調査によりますと、ディープフェイク映像の圧倒的多数が、合意を得ていないポルノを含んでいることがわかった、とのこと。

その調査では、オンラインで投稿されたディープフェイクの96%は性的に露骨で、そのうちの99%はエンターテインメント業界で働く女性を素材に使用しているのだそうです。

凶器となったディープフェイクの主なターゲットが、女性であることは否定できない状況となっているのです。

カリフォルニア州が悪意あるディープフェイクの利用を禁止。大統領選を見据えて

調べた記者の言葉

Motherboardでハッキングや犯罪系の記事を得意とし、VICEに記事を書いたジョセフ・コックス記者によるツイートがこちら。

It's almost as if a technology and tool created for the explicit purpose of targeting and harassing women is going to be used mostly for targeting and harassing women. Those jumping on the deepfakes hype need to get some real world perspective of actual victims.

— Joseph Cox (@josephfcox) 2019年10月7日

誰もが 「ディープフェイク」 選挙の脅威を誇張しているが:何千ものディープフェイク動画を調査した結果、大多数は合意のないポルノであり、フェイク・ニュースや政治的なものではないことがわかった。分析されたポルノビデオの100%は女性だった。

まるで、女性を標的にして嫌がらせをするという明確な目的のために作られた技術やツールが、主に女性を標的にして嫌がらせをするために使われるようだ。ディープフェイクの誇大広告に飛び乗る人は、実際の犠牲者が見る現実世界の視点を知る必要がある

最近政治利用された動画はディープフェイクではなかった

しかし、最近最も広く拡散された動画のひとつはディープフェイクではなく、とある女性をターゲットにしたもので、政治的な目的で使われていました。

5月、ナンシー・ペロシ下院議長の不明瞭な言葉を映した、映像の乱れた動画がネット上でヴァイラル化しました。ですがこれは主に、フォックス・ニュースが共有した動画を、ドナルド・トランプ大統領がリツイートしたことが原因だったとのこと。この出来事は、細工した動画がいかに政敵を誤解させたり、発言を歪曲させたり、ハッキングされたニュースのサイクルに利用されてしまうかを、最も明白で公に示す例でした。

技術的にどんどん簡単になってきている

現在カリフォルニア州は、こうした動画に対して人々が対策を講じることを可能にする道を開いています。ですがこうした動画は、急速に発展しつつあるディープフェイク技術とオーディオ・ヴィジュアル編集ソフトウェアによって、どんどん制作が容易になるばかりです。

法律はかなり限定的

カリフォルニア州のマーク・バーマン議員は、政治的なディープフェイクの法案を書きました。彼は声明文にてこう述べています。

有権者を混乱させるため、虚偽の情報キャンペーンを行いたいと考える発火寸前の人々にとって、ディープフェイク技術は、選挙の文脈において虚偽の、つまり決して起こらなかった候補者の言動を評価する、強力で危険な新ツールとなります

この法律は、選挙の60日前に公開されたディープフェイクにのみ適用されます。ですが明らかに作り物感が強かったり、本質的に風刺的であることが明白なディープフェイクは、法律から除外されます。これは法律が言論の自由の保護に抵触しないように見せる意図があります。

テキサスが一番乗りだった

先月テキサス州は、選挙の1カ月前に政敵に関する事実を歪めた政治的なディープフェイク動画を制作・共有することを軽犯罪行為とする法律を可決した初の州となりました。

カリフォルニア州とテキサス州が、今から2020年の選挙までの間にこれらの法律を施行するのに苦労することはほぼ確実です。しかし州議会がやっと、この技術の急増によりもたらされる荒廃社会の可能性を検討し始めたことは良い兆候だと言えましょう。

Source: CNET, California LEGISLATIVE INFORMATION, VICE, Twitter, CNN BUSINESS