経営破綻したプラスワン・マーケティングからFREETELブランドを継承したMAYA SYSTEMが、世界スマホと銘打った「jetfon」を2018年8月に発売する。同モデルには、中国・深センに拠点を構えるuCloudlinkが開発した「クラウドSIM」が内蔵されており、海外渡航時には、その国や地域に合わせた料金プランを購入できる。国際ローミングと比べても料金は割安で、最安の地域では、1日あたり380円(非課税)で300MBまで通信できる。【訂正あり】
同様の仕組みはuCloudlinkのWi-Fiルーターにも採用されており、MAYA SYSTEMも「jetfi」として端末の販売やレンタルを行っている。jetfonは、これをスマートフォンと組み合わせたものといえる。uCloudlinkのサービスをそのまま提供するのではなく、料金プランなども、日本向けにカスタマイズされている。
MAYA SYSTEMが投入するクラウドSIM搭載スマートフォン「jetfon」海外では、一部近い製品は発売されているが、日本ではスマートフォンに書き換え可能なSIMカードを内蔵するのは初になる。この端末を、MAYA SYSTEMはどう売り出していくのか。同社が新たに送り出すjetfonの中身や戦略を、代表取締役社長の井上千鶴氏や、プロダクトオペレーション部課長の南健太郎氏に聞いた。
MAYA SYSTEMの井上社長―― 最初に、jetfonとはどんな製品なのかを改めて教えてください。
井上氏 商品としては、クラウドSIMとスマートフォンを組み合わせたものです。日本では世界スマホと銘打ち、jetfonというブランドで展開していきます。日本初の世界スマホとして、国境のない通信を提供していくことを目標に掲げています。
製品を発売する背景には、海外でインターネットを使うとき、どうやっていいのかが分からない人が、まだたくさんいるということがあります。それをもっとシンプルにしていくのがjetfonの役割です。
プリペイドSIMは確かに安いのですが、どこで買えるか分からなかったり、探すのが手間だったり、ショップに行っても日本語が通じなかったりします。分かっている方でないと、ハードルが高いですよね。一方で、国際ローミングは料金がまだちょっと高い。レンタルWi-Fiもありますが、あらかじめ申し込んでおかなければならなかったり、空港で並ぶ必要があったり、2台持ちで荷物が増えるという問題もあります。
海外渡航者自体は横ばいですが、レンタルWi-Fiはどんどん伸びていて、インターネットを海外でも使いたいというニーズは広がっています。そんな中、jetfonは、使い方が簡単、通信品質が高い、リーズナブルであることを特徴にしています。
南氏 一番大きい特徴はクラウドSIMを搭載しているところですが、ユーザーには旅に出られる方も多いと思うので、耐性のあるアルミボディーに、表面はアルミノシリケートガラスを採用しているため、タフにお使いいただいても十分耐えられる製品になっています。また、対応周波数が多く、センサー類も一般的なものは全てそろっているため、旅先はもちろん、日本でも便利にお使いいただけると思います。
【訂正:2018年7月20日14時50分 表面のガラスの種類について、MAYA SYSTEMの説明に誤りがあったため、訂正致しました】
日本ならではの点としては、Jアラートに対応し、ミサイルや水害の緊急速報も鳴ります。VoLTEも利用でき、au VoLTEに関してはアップデートで対応する予定です。これでお値段は3万9800円(税別)です。
―― 料金はいくらぐらいになるのでしょうか。
井上氏 実際の料金は一般的な国際ローミングが1980円(非課税、以下同)から、Wi-Fiルーターのレンタルが680円程度なところを、われわれは300MB、380円からで提供します。1日、7日、1カ月というプランもあり、アジアであれば、3GBで1カ月、1880円とかなりお得です。クラウドSIMを使っているので、海外キャリアの高品質なネットワークに直接接続できるのもメリットです。また、中国向けには、(GoogleやTwitterなど、中国のグレートファイアウォールで規制されているアプリ、サービスを使えるよう)VPNサービスも用意します。
渡航前に専用アプリからプランを購入する同じようなデザインの海外端末(uCloudlinkが開発したベースモデル)とどう違うのかというと、日本円でプランを用意していたり、VPNサービスがあったりと、日本人が使うために、日本仕様に落とし込んでいるところで、料金プランを選択する「Glocalme」のアプリも、きちんと日本語にローカライズしています。支払いのクレジットカードも、(VISAやマスターカードだけでなく)JCBに対応しています。また、法人限定ですが、後払いの請求書払いもできるようにしました。
当初はクレジットカードだけにしようかも検討しましたが、いろいろな制限は取り除きたいと考えていました。できるだけハードルを低くしたいと思っていて、そのときにカードだけだと、ターゲットのビジネスユースがなかなか難しい。5台以上、10台以上という話も当初はありましたが、思い切ってそういう制限もやめています。
―― そもそもの話ですが、せっかく手に入れたFREETELブランドを使わないのはなぜでしょうか。ちょっともったいない気もしました。
井上氏 FREETELはブランドイメージができあがっていて、格安スマホという印象を持たれています。この端末では、格安SIMではなく、クラウドSIMという新しいメッセージを出していきたい。それであれば、新しいjetfonというブランドを立ち上げた方がいいのではないかという判断です。ただ、FREETELも中東などの海外でイメージがよく、日本にも何十万というユーザーがいるので、どういうふうにしていくかは検討しています。
―― ハードウェアについては、uCloudlinkのベースモデルとあまり変わっていないように見えます。FREETELで培ったノウハウを入れていく方向性もありえるのでしょうか。
南氏 後継機もあり、その開発にも着手しています。今回の端末はuCloudlinkさんのプロジェクトが進んでいる途中でわれわれが入ったので、手を出せる箇所が少なかったのが実情です。法令順守や国内向けのカスタマイズにとどまりました。ただ、次の機種はまだ始まったばかりなので、こちらにはより深く関与することができます。われわれのアイデアをもっと詰め込んで、より魅力的な製品にすることもできると思います。
―― 例えば、カメラもデュアルカメラに対応し、ナチュラル美顔を搭載するなど、FREETEL端末にはFREETEL端末ならではのこだわりがありました。こうしたところも次は期待できそうでしょうか。
南氏 エンジニアは弊社にもいるので、今回も画像のチューニングはさせていただきましたが、次はもっと注力していきたいところです。
井上氏 詳しい方だとスペックや性能に目が行きますが、例えば翻訳アプリや通貨換算アプリなど、海外に行ったときに便利なアプリがもともと入っているようなカスタマイズも面白いのではと考えています。アイデア段階ですが、そうしたことをやっていけば、今は8割ぐらいが男性のFREETELユーザーの比率を変えていけると思います。女性層はもっと取っていきたいですね。
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