音楽の聴き方が徐々にサブスクへと移行しつつある2010年代後半の流れの中にあって、何より「楽曲」の力で支持を集めたあいみょんとNulbarich・JQは、時代の申し子だと言っても決して大げさではないだろう。メガネブランド「Zoff」の「SUNGLASSES COLLECTION 2018」のメインビジュアルモデルを、そんな2人が担当したのは、決して偶然ではないように思える。デビュー時から2人を追いかけてきたCINRA.NETでは、両者の初となる対談を実施。その模様を3回に分けてお届けする。
1回目のテーマは、「バズ」について。NulbarichはHonda「GRACE」や資生堂「アネッサ」といったCMでの楽曲起用、あいみょんは『関ジャム 完全燃SHOW』や『ミュージックステーション』といった音楽番組への出演などをきっかけに、SNSでバズが起こり、ともにこの1年で一気に知名度が上昇。ワンマンのキャパも広がり続ける中、本人たちは現状をどのように捉えているのか。そこにはアートに対する2人の真摯な眼差しがあった。
—両者ともにこの1年でグッと知名度を上げたと言っていいと思うんですけど、お互いのことをどんな風に知りましたか?
JQ:いやもう、あいみょんさんは噂が噂を呼んでいたので……ググりました(笑)。
あいみょん:私はCMかなあ? SNSで「Nulbarich」っていうワードをよく見るようになったんですけど、最初はバンド名なのか個人なのかもわからなくて。Zoffのお話をいただいたときも、「何人来るんやろ? 私1人対5人とかでやるのかな?」って思ってたら、「1人なんや」っていう(笑)。
左から:JQ(Nulbarich)、あいみょん
—ご自身としては、「これをきっかけに状況が変わってきた」みたいなタイミングって、いつ頃だと感じていますか?
あいみょん:私はたぶん『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日)の「蔦谷好位置、いしわたり淳治の売れっ子音楽プロデューサー2人が選ぶ2017年の年間ベストソング特集!」で取り上げられたときなのかな? だから、ここ半年くらいですね……どうですか?
JQ:どうなんですかね……でも、そんなに変わった実感はないですよ。同じところに住んでますし、移動がグリーン車に変わったとかでもないし。ワンマンの規模とかは変わってきましたけど、「バズった」みたいな感触は全然ないです。
あいみょん:ああ、それは私も感じたことない。
JQ:うれしいことに、描いていた以上にステップアップできてるかなって感じではあるんですけど、急に何かがバーンって変わった感じは全然ないです。
—2人を見ていて思うのは、「やっぱり楽曲ありきなんだな」っていう、ごく基本的なことです。ここ数年は「バズらせるにはどうするか?」みたいなムードがあるけど、まずは優れた楽曲があって、それがメディアを通じて聴かれて、SNSと結びついたときに、初めてバズが起こり得るんだよなっていう。
JQ:あざっす!
あいみょん:あざっす! JQさんこれよく言うんで、私も使わせてもらおう(笑)。
JQ:日々成長はしてると思うんですけど、根本的な自分の音楽のスタイルは変わらずやってきてるつもりなので、いまおっしゃったように、やっぱりケミストリーなんだと思います。掛け算というか、関わる人が全員1以上のものを持てば、自分の持ってる以上の数字が出る。
でも、誰かがゼロだとゼロになっちゃう。アートをビジネスにするってそういうことで、最初から計算して曲を作るものではないと思うんですよね。僕、ホントはタイトルとかもつけたくないんですよ。
—それはどういうことでしょう?
JQ:美術作品のタイトルとかマジで嫌なんです。自分の思いみたいなものを、絵っていう決してわかりやすくはないものにあえて落とし込んでいるのにも関わらず、そこにわかりやすいガイドとなるタイトルをつけるのって、すごくナンセンスな気がする。
「失恋したときにこの曲を聴いてください」とかっていうのも、好きじゃない。失恋したときに流れていた曲が、その人にとっての失恋ソングになると思うんですよ。作るものに自分の思いは100%込めるんですけど、聴いてもらうときは「自由に聴いてください」っていうのが僕の思うアートなんです。
あいみょん:めっちゃわかります。「どういう曲か」っていうのは聴き手にすべて委ねた方がいいですよね。私も自殺の曲を書いたとき、自殺の曲として届けたつもりはなくて、「自殺の曲でも誰かにとってはラブソングになる」って言ってたんです。だから、すごい共感しました。