Androidスマートフォンのフラッグシップモデル「HUAWEI Mate 20 Pro」の国内での発売日となる11月30日、ファーウェイのConsumer Business GroupのVice PresidentであるJim Xu氏が来日し、報道関係者からのグループインタビューに応じた。
本稿では、その模様をお伝えする。
ファーウェイのConsumer Business GroupのVice PresidentであるJim Xu氏――HUAWEI Mate 20シリーズは海外で先行して発売されていますが、実績はいかがでしょうか。数字や販売方法などで興味深いものがあれば教えてください。
Jim Xu氏Mate 20は10月にロンドンで発表し、それから1カ月半経ちましたが、Mate 10と比べると大きく増加しました。一世代前と比べると、たくさんの国で3~5倍のペースで増えています。製品については非常に自信をもってお勧めできます。トータルで1000万台に届くのではないかとみています。今年の3月にP20シリーズをパリで発表し、10月にMate 20シリーズを発表し、そのたびにメディアや消費者から非常にポジティブな評価を得ています。多くのメディアで今年のベストなスマートフォンだと評価いただいています。
――この1年を振り返っての成果と課題を教えてください。
Jim Xu氏まずコンシューマービジネスグループの中ではMate 20は最も革新的な製品になります。フラッグシップモデルで消費者からも認めていただいており、海外ではフラッグシップモデルの販売台数が前年同期比で倍になっています。それがミドルクラスやローエンドのモデルの販売をけん引しています。いろんな国で出荷台数が50%増えています。年間のスマートフォンの出荷台数は2億台を超えると思います。スマートフォン以外でもタブレットでも非常にいい実績を残せました。日本でも広く消費者に受け入れられ、他の地域でも一番良いAndroidタブレットだと評価されています。さらにPC製品も出しています。来年にはもっとたくさんの機種をこの市場に提供していきますので、このジャンルに関してもさらに研究開発での投資を拡大していきます。ほかのウェアラブルデバイス、たとえばスマートウオッチ、リストバンド、さらにIoT製品は個人・家庭向けのオールシーンのソリューションになります。今後のファーウェイの重要なカテゴリーとして、今後も投資を拡大していきます。
――米国政府から名指しで参入を拒否されていますが。
Jim Xu氏申し上げたいのは、ファーウェイの製品は170の国で提供されており、トップ500の大企業を顧客として持っています。さらに消費者の数では3億人に対して端末を販売しています。この数字によって、ファーウェイの製品が世界の多くの人に気に入られ、また信頼されている証になると思います。一部に我々が製品を販売できない地域がありますが、条件が許されることなら、我々もこの市場にも参入したいと考えています。いずれにしても、我々は一貫して消費者のために最も良い製品や体験、サービスを提供していく決心に変わりはありません。
――(Consumer Business Group CEOの)リチャード・ユーさんもサムスンを抜いて1位になるという目標を掲げていましたが、米国市場はかなり大きく、そこ抜きで1位になろうとしているのか、なんとか攻略しようとしているのか、どちらなのでしょうか。
Jim Xu氏弊社としては1位になることを明確な目標として掲げているわけではありません。1位というのは、あくまで結果であって、目標ではありません。目標は、本当に消費者に気に入られるような製品を作って、高品質でサービスが良く、体験も良いというニーズを満たす製品を作ることです。これはまずまずなところまで来ていると思うのですが、リテールやアフターサービス、ユーザー体験についてはまだまだ良くしていかなければいけないと考えています。
今回、日本に来て、日本の小売業界からいろいろと勉強したいと思いました。小売りに関連した運営能力や効率をいかに上げるかということでヒントをもらいに来ました。目標はあくまで消費者にサービスを提供することです。まじめに製品を作ることに専念し、サービスをしっかりやって、リテールにおける体験を向上させることができれば、より多くの消費者に気に入られ、我々の製品を買ってもらえるようになります。これが我々の本当の目標です。
――やはり課題はリテールやアフターケアになるのでしょうか。ほかにもチャレンジしていきたい領域はあるのでしょうか。
Jim Xu氏我々も気づいたのですが、たくさん製品を作っても、消費者のニーズをちゃんと取り入れているかというと、まだ大きな開きがあると思います。例えば、スマートフォンのカメラ機能を世界一のものにしました。しかし、これらの写真を手軽に編集して管理、共有、保存するに至るまで、スマートフォンとパソコン間で迅速にデータのやりとりができるとか、これらに関してはまだまだ道のりは長いと考えています。写真をスマホからPCに転送することは今でもできますが、プロジェクターに簡単に映し出せるかというとそうではありません。違う会社のものだったりしますので。撮った写真を大画面にすぐに出すのは難しいのです。消費者にしてみれば、全ての製品をファーウェイのものにするのは難しいので、家やオフィスの中にある機器の全てと相互接続できるような開かれたプロトコルを提供したいと考えているのですが、まだそこまでは至っていません。ファーウェイではHiLinkというものをベースに取り組んできましたが、日本ではまだそれを展開していません。消費者のニーズを完全に満たすまでは、まだ大きな開きがあると思います。
――最近、世界的にiPhoneが売れなくなってきたという話もありますが、ファーウェイにとってチャンスと考えているのでしょうか。ハイエンドの端末が売れないとなると、ファーウェイも戦略を変更しなければならないのでしょうか。
Jim Xu氏日本のことを仰ってってるのだと思いますが、中国市場では依然としてiPhoneが売れています。私もiPhoneの販売状況にはあまり注目していません。やはりすごく高いですし、それに届かない価格帯でやっていますので、我々にしてみれば、既存のユーザーに対してユーザー体験を上げていくこと、簡単にiOSからAndroidに切り替えができるようなものを提供しなければいけないと思います。iOSからAndroidに切り替えたいと思ったとき、写真や電話帳などを移したいと思ったとき、今では非常に簡単にデータを移せるようになりました。こうしたソリューションを提供することで、消費者は多くの選択肢が得られることになります。
――今年、日本ではP20 liteがよく売れましたが、海外ではどのモデルが最も売れたのでしょうか。売れるモデルの傾向に違いはあるのでしょうか。
Jim Xu氏欧州のほとんど国で我々のシェアが20%を超えています。一部の国では30%を超えています。これらの地域では、ミドルレンジの製品、Pシリーズのliteが一番ボリュームがあります。中東、アフリカ、ラテンアメリカ、アジア太平洋の一部の国では、ローエンドのエントリーモデルが一番ボリュームが大きく、たしかに国によって傾向が異なります。日本市場ではハイエンドが非常にボリュームがあります。実はイギリスとドイツを足した量に相当します。これも我々にとっては大きな伸びしろになると考えています。
――モデルごとの売れ行きの違いの出方には満足されているのでしょうか。どのレンジの製品を伸ばしたいと考えているのでしょうか。
Jim Xu氏海外に向けては、ハイエンド、ミドルレンジ、ローエンドというラインナップをこれからも継続していきます。それぞれ消費者のニーズも違ってきますので。しかし、我々自身にしてみれば、次のステップとして、やはりハイエンドの数を伸ばしていきたいと考えています。消費者がブランドを認めるきっかけというのは、ハイエンドから始まりまるものです。ファーウェイは研究開発に多額の投資を行っている技術系の会社です。昨年の研究開発の金額は120億ドルに達しており、今年はさらに増えます。今年はこれまで蓄積してきた技術力をどんどんハイエンドの機種に搭載していきたいと思います。ファーウェイの革新的で技術が先行しているイメージを作っていきたいと考えています。研究開発からマーケティングまで、ハイエンドにフォーカスして展開している理由にもなります。
――日本ではキャリアからの端末購入補助がなくなる見込みですが、ハイエンドモデルはきちんと売れるのでしょうか。
Jim Xu氏弊社の製品はあくまで消費者志向でやっていきます。製品のポートフォリオでは、日本市場に向けてもミドルレンジの部分を強化していきます。ハイエンドの製品は、これまでと同じように革新的で、技術の先進性が分かるように製品づくりをして、ブランディングしていきます。ミドルレンジの製品はは、一般の消費者でも買えるようにコスパの良さも変えずにやっていきたいと考えています。こうした製品戦略は今後も変わることはありません。
――昨年末からAIのプロセッサーに力を入れていますが、今後3~5年でAIがスマートフォンの中でどう差別化されていくのでしょうか。
Jim Xu氏次世代のスマートフォンというのは、ハードウェアの変革以外にソフトウェアによる体験の向上も絶対に必要で、これがAIによってもたらされるものだと考えています。
まず、今後数年では、音声認識が強化されます。今は本当にたくさんのアプリが入っていますが、全て指でタップして操作します。しかし、今後はクラウドと連携して音声認識を通して、ユーザーが言っていることを理解し、ユーザーが望む動きをします。これは絶対に実現します。
2つめとして、消費者の生活をつなぐような機能を実現します。一つの商品を識別して、機能や販売などを全て関連付けさせられるようになります。異なる人たちに対して製品のニーズに応じて異なるソリューションがそれぞれの人たちに提供されることになります。AIは今後もっと広く応用されることになります。
数日前にMate 20 Proを日本で発表しましたが、AIを使ったデモを行いました。食べ物にカメラを向けるとカロリーが分かったり、物を識別してその場でオンラインショッピングサイトに飛ぶとか、過去と比べればかなり大きく進歩しましたが、未来から振り返ってみると、まだいろんなことを十分にできていないと思います。
――AI以外ではいかがでしょうか。
Jim Xu氏ハードウェアについては、より性能の高いカメラ、ビデオカメラなどに近づけたいと考えています。そうすれば記者の皆さんも重い機材を持たなくて済みますよね(笑)。そこまだ伸びしろが大きいと思います。また、スマートフォンのバッテリーのもちをいかによくするかも重要なテーマです。少し前に弊社から発売した新製品で、HUAWEI Watch GTというスマートウォッチは、実は14日間継続して使用できます。こうしたユーザー体験が消費者に大きな価値をもたらします。こうしたことがハードウェア面で我々が努力する方向です。
――Mate 20 Xではペン入力に対応しました。手書きについてはどう取り組んでいくのでしょうか。
Jim Xu氏Mate 20 Xに関しては、ペン入力対応で大画面の端末ですが、ファーウェイとして全ての国で販売する自信がありませんでした。まずは中国で販売し、リサーチしなければなりません。これだけ大きな画面に消費者がどう反応するか、気に入るかどうか。大画面ですと、例えば、メモはとりやすくなります。さらに両側にゲームコントローラーを付けることもできます。実は中国での反応は悪くありません。マレーシアとタイでも試しに販売してみましたが、市場の反応はまずまずです。ですから、今後も継続してこうした製品というのも出していきたいと考えています。次には日本でも試しに販売していきたいと考えています。
――Mate 20シリーズでは記録媒体として新しくNM(Nano Memory)カードが採用されました。日本でも純正のスマートビューカバーが販売されます。プラットフォームの発展にはサードパーティの協力やアクセサリーメーカーとの協業が必要だと思いますが、そうしたパートナーに対してどのように働きかけていくのでしょうか。
Jim Xu氏昨日、東京のショッピングモールで見たのですが、日本では多種多様なサードパーティが作ったアクセサリーが販売されていました。海外ではこれだけ多くのアクセサリーは見られません。ここでも我々は大胆に試していくべきだと感じました。サードパーティと一緒にアクセサリーを多くしてかないといけない。スマートフォンそのものは全部同じで変えられませんが、さまざまなアクセサリーを取りそろえることで、個人個人のニーズを満たせるようになるのだと思います。これが日本に来ての大きな収穫になりました。
――ドコモ専売でP20 Proを、ビックカメラ専売でMate 20 liteを販売されましたが、販売チャネルごとに専用モデルを用意するというのは海外でもよくある手法なのでしょうか。
Jim Xu氏どちらかというと、弊社としては、多くの製品をパートナーに提供していきたいと考えています。ただ、こうしたパートナーの一部では自分たちにあった価格帯の製品を選んでいます。我々にしてみれば、どの製品も販売可能です。しかし、メーカーから消費者に至るまで、間にいろんなパートナーが介在しているわけですから、我々のパートナーがどういった選ぶかというのは、あくまでそれを尊重するだけです。日本で発売されたものは、日本のオープンマーケットでも販売していきます。
――ありがとうございました。