Essential PH-1。Essential Ph-One。Essential Phone。
私はAndroidというOSがとても好きです。なにも変えずにそのまま使うこともできるけど、変えたいところがあればその通りに変えられる、そんなオープンさが爽快ですよね。一度は周囲の「iMessageないの? AirDropで送るよ!」といったiPhone圧に飲み込まれて3年間iPhone 5sを使ってた私ですが、ここ数年はAndroid端末を「マイスマホ」として育て上げる日々をエンジョイしています。
ところが。ここ最近の(日本で利用できる)Android端末はというと……そこまで惹かれるモノがありませんでした。いつも、「あれ、なんか…ごちゃごちゃしてるなぁ」とか、「ちょっと安っぽいなぁ」という印象を受けて買い換えるのをやめてしまうのです(Pixelはいつ日本に来てくれるの…?)。
そんな悩みを抱えていたところ、Androidの父とも呼ばれているAndy Rubinさんの会社が作ったスマホ「Essential PH-1」が今年の4月末から日本への発送が開始されて、すべてをひっくり返してくれました。アメリカでは10ヶ月ほど前に発売されたスマホではありますが、筐体のデザインは未だに新しく感じられ、高性能プロセッサも乗っており、ムダが一切ないピュアなAndroid 8.1が搭載されているんです。Ph-1はいわば、最高級の「マイスマホの卵」です。
それでいて499ドル(約5万5000円)というお値段。総合的に見れば、今買える端末の中でトップクラスの満足感でしょう。
知る人ぞ知る良スマホ、Essential PH-1、改めてレビューしました。
日本にやってきたEssential Phoneを開封します! 今夜19時からGIZMODO TVで生放送
日本中のギークとナードがお待ちしてました。ギズモードがおくる生放送番組、GIZMODO TV。ベータ版での配信が毎週続いてますが、いつも盛況で感謝...
https://www.gizmodo.jp/2018/05/essential-phone-13.html
良いスマホは良い素材から
Essential PH-1は一見、アルミのフレームが2枚のガラスに挟まれたありきたりなスマホに見えるかもしれません。が、それは違います。フレームはチタン製で、背面パネルはセラミック製。しかもこれはただ見た目のためだけのチョイスではなく、機能的な目的も果たしているんです。
まずはチタン。
カッコいい、という心象はさておき、これはスマホに一般的に使用されるアルミより固い素材で、ちょっとやそっとのひっかきや衝撃には負けません。ただし密度が高いのでPH-1はサイズの割に重く感じますが、重すぎるわけではなく、高級感のある「沈み」と呼びたくなるものですね。
続いてセラミックのバックパネル。
この素材はモース硬度というひっかき傷の耐性が8と非常に高く、なんと鋼鉄よりも上。なので誤って家の鍵と一緒にポケットに入れてしまった時もバックパネルは傷つきませんでした。でもフロントガラスはちょっと傷ついてしまった模様。なにせフロントガラスは他のフラグシップスマホ同様の「ゴリラガラス5」なので(褒め言葉です)。
そして見た目的なデザインはというと「モノリス」の一言に尽きます。ロゴもなく、出っ張りもなく、シックで高級感あふれる「一枚岩」感が強くて、ほぼ左右対称な「完璧&シンプル」なデザイン。それでいて知名度が低いので、よく「なにそのスマホ!」って聞かれます。カバーやステッカーでオリジナリティーを出さずともオンリーワンなスマホ。この特別感は格別です。
Android界のiPhone X:造りとノッチが先進的
Essential PH-1を使って見て驚いたのは、その完成度と将来性の高さです。Androidスマホを評価するとき私は大抵ほかのAndroidスマホとの比較から始めることが多いのですが、PH-1は真っ先にiPhone Xと比べたくなりました。PH-1はそれほどAndroid界において革新的な存在だったのだと言えます。
ではまずこのiPhone Xと並べた時の「ノッチ」サイズの差をご覧ください。
これです。もう同じ「ノッチ」とは言い難いですよね。iPhone XのノッチはTrueDepthカメラが入っていたりと大きいなりの理由がありますが、iPhone X以降に出てきたノッチ付きAndroid端末の多くは……PH-1のノッチを知ってしまうとどうも滑稽に見えてきます。
というのも、PH-1のノッチは完成度が異常なんです。
この小さな空間に前面カメラ、環境光センサー、近接センサー、LEDインジケーター、そしてイヤピーススピーカーが詰め込まれていて、どれもちゃんと機能します。今やノッチの大きなスマホがスタンダード化していますが、去年ローンチされたPH-1がまだ一歩先にいるわけです。
あともうひとつPH-1が先取りしているなと思うのが、パーツ同士が隙間なく噛み合っている造り。こうすると画面の端から指を滑べらせやすいので、大変ジェスチャー操作に向いています。実際次のAndroid Pではジェスチャー操作が可能になりますし、Essential Products社がこの流れを想定していたかどうかは別として、PH-1はAndroid Pを入れる準備ができています(ていうか公式のβ版があるので、今度レビューしたいと思います!)。
Google I/O 2018で発表された「Android P」の新機能まとめ #io18
新ホームボタンが便利そう!5月9日2時より行なわれたGoogleのカンファレンス I/O 2018にて、次期Android OS「Android ...
https://www.gizmodo.jp/2018/05/android-p-new-feature-io18.html
iPhone Xが「これからのiPhone」を表す存在としてローンチされたように、PH-1も「これからのAndroidスマホ」を暗示する存在です。そんな先進的なスマホを一発で出してしまうEssential Products社に惚れてしまいそう。
使用感は平均かそれ以上
まず画面は2560×1312の高解像度iPS液晶ディスプレイで、発色が艶やかかつ輝度の調整の幅も大きめです。夜は充分暗くできて昼時もよっぽど日差しが明るくないかぎり文字が読めますが、本音を言えば、有機ELディスプレイじゃないのが残念で仕方ありません。
特にそう感じるのはノッチの両サイドが黒く表示されている時ですね。有機ELディスプレイだったら完全に黒くできるのに、PH-1は液晶ディスプレイなのでバックライトが少し漏れてグレーっぽく見えるんです。とはいえ液晶ディスプレイの中ではかなり綺麗な方なので、5万円代のスマホということを考えるとまったく問題ありません。
音声に関しては致命的な欠点はないものの、妥協点が多い感じです。メディアの再生時に音を発するスピーカーが下向きの一個だけで、しかも高音がちょっとつんざく感じがします。あと3.5mmジャックがないのは、やっぱりまだ寂しいです。でもUSB-C→3.5mmジャックの高品質なアダプターが付属されているので「仕方ないなぁ」という心情になります。
あと付属品でいえば、先ほどのアダプターに加えて充電ケーブルも良質です。一般的な樹脂製のケーブルではなく、外側が堅牢なファブリック素材でできています。しかもケーブルにはまとめるためのバンドがついていて、充電器自体も急速充電(27W)に対応しているというフルカバーっぷり。こういう細やかな気遣いはとても嬉しいですよね。他のメーカーさんも是非に。
PH-1のボタン類は…微妙です。クリック感と音はとても心地いいんですが、別の面で配慮が足りていません。音量ボタンと電源ボタンの配置が近い上に形も似ているので、なにかと押し間違えてしまううんです。もうちょっと距離を離すか、どちらかにテクスチャを付けるかなどをして、しっかりとした差別化をして欲しかったですね。でもボタンが右側にまとまっているのは、横に持った際に押しやすくてGoodです。
指紋センサーは背面の上半分の中央にあります。最初はちょっと上すぎるかなぁと感じましたが、慣れてくるとむしろ快適。早さも申し分ないです。あとロック解除で言えば前面カメラでAndroidの「Smart Lock」で顔認証が利用できます。が、セキュリティーレベルはそれほど高くないそうなのであまり推奨しません。私は使いますけどね。だって便利だもの。
内部スペックはほぼ完璧です。プロセッサは2017年のフラグシップ「Snapdragon 835」で、RAMは4GB、ストレージは128GBの、バッテリーが3040mAh。充電は1日の終わりに大体30%ほど残っていることが多かったので、これも充分だと思います(急速充電にも対応していますしね)。
ソフトウェアはピュアなAndroid 8.1です。いらないけど消せないアプリや、使わないけど居続ける機能が、ほぼ一切ありません。なので必然的に動作も快適で、ちょっと感動すら覚えます。ただし例外的にカメラアプリはEssential独自のものとなっています。これについてはもうちょっと。
問題視されていたカメラは…いたって普通
ローンチ当初は酷評に続く酷評を受けたPH-1のカメラアプリも、今や2017年発売のスマホとしての合格ラインに達しています。当初は本当に不評で、ギズでも「近年稀にみるダメカメラ」なんて言っていましたが、その後のソフトウェアアップデートで写真のクオリティが大幅に改善されたみたいです。この通り。
昼頃に撮った写真
夕方に撮った写真
夜、蛍光灯の明かりで撮った写真
夜の渋谷。ダイナミックレンジは中々です
暗い室内で撮りました。ちょっと厳しめ?(私の手ブレ?)
ポートレートモードでボケがイイ感じの時
ポートレートモードで輪郭が気持ち悪い時
むしろ今となっては、使い勝手がいい方かもしれません。カメラの起動が電源ボタンの2連打でできて、しかもそのすぐ上にある音量ボタンで撮影できるので、シャッターチャンスを逃しにくいんです。
とはいえ他の撮影モードに関してはまだまだ改善の余地があるのも事実。まずそもそも撮影モードが少なく、基本的な写真撮影と動画撮影のモード以外には、ポートレート、モノクロ、そしてスローモーションしかありません。しかもポートレートモードに関してはまだちょっと輪郭の識別が甘い時があるので、今後のアップデートに期待しています。
その他の残念なところ
個人的にもっとも残念だったのは防水でない点と、ARCoreに対応していない点です。
防水に関しては一応IP54ということで「防滴」程度の性能はあるみたいですが、やはりそれだけでは不安。ARCore非対応に関しては、ARアプリをいろいろ試したい私にとって大きな痛手でした。でも後者はソフトウェアの問題で、いずれはアップデートで対応できるそうなのでそれに期待しています。
あと非金属のバックパネルなのに無線充電に対応していないのもちょっと残念だなぁ、と思ったのですが、よくよく考えたら5万円代のお値段を考えると妥当なんですよね。むしろ急速充電に対応してくれているだけ良かったなと思います(何度か救われました)。
Essential PH-2は出ない…けどPH-1のサポートは続く
……Essential PH-2は出ないのだそう……。PH-1でノッチやジェスチャーといった未来をいち早く見据えていたメーカーなだけに、2作目のスマホには大いに期待を寄せていました。しかし何かしらかの理由から、スマホの開発はストップするという発表がされたのです。
でもPH-1のサポートは今後もあと2年強は続くそうなので、その点においては安心しても良さそう。むしろ他のメーカーより積極的にアップデートしてくれていますし、Android Pへのアップデートもほぼ確実そう。
2 years of software updates and 3 years of security patches.
— Essential (@essential) 2018年5月25日(ローンチから)2年間のソフトウェアップデートと、3年間のセキュリティーパッチ(を配信します)
結論:Essential PH-1は「買い」
いま日本で使えるSIMフリーAndroid端末の中からEssential PH-1以上のモノを見つけたい、という方はとっても苦労されるでしょう。なにせPH-1は、そのEssential(必要不可欠)の名の通り、いらぬ要素は省いて必要なところにトコトンこだわられたスマホなのです。
iPhone Xよりいい素材を使っていて、今後2年はソフト&ハードウェアが持ちそうな、ピュアなAndroidの搭載されている、イカしたデザインの5万円台で買えるスマホ。これに勝る満足度はそうそうないと思います。
でももし現れるとしたら、それはEssential PH-1に対抗心を燃やしたiPhone SE2でしょうか? 廉価版Pixel 3でも嬉しいですよ。
iOS 12とAndroid P、どっちが楽しみ? 期待度で五番勝負!
秋が待ち遠しい…。Google(グーグル)もApple(アップル)も、この秋にリリースされるAndroid PやiOS 12で、ボクらの心をワクワ...
https://www.gizmodo.jp/2018/06/ios12-androidp-comparison.html
ではでは、Android P β版のレビューもお楽しみにー!
(2018年6月25日 12:30修正)記事初出時、Essential PH-1の「Googleアシスタント」が日本語環境には対応していないと記載がありましたが、再度確認をしたところ対応していたため、該当箇所を削除しました。
Photo: 山本勇磨、西谷茂リチャードSource: Reddit, Twitter(西谷茂リチャード)