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エンガジェット日本版 4万円を切りの高コスパ──P40 lite 5G を試す。GMS非搭載が唯一の悩み

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米国の制裁を受け、「GMS(Google Mobile Service)」の搭載を断念したファーウェイ。日本でも、4月に発売された「Mate 30 Pro 5G」から、自社で構築したエコシステムの「HMS(Huawei Mobile Services)」を採用するようになりました。オープンソースのAndroidを使用しつつ、その上に乗るサービスやアプリ開発者向けのAPIを自社製に置き換えているというわけです。軸足をHMSに移しつつ、ファーウェイは日本でも一気に対応端末を拡大。P40シリーズ3機種を、6月に発売しました。

今回、取り上げたいのは、P40シリーズ3機種の中ではちょうど真ん中の端末と言える「P40 lite 5G」です。ご存知の方も多いと思いますが、ファーウェイは各世代のPシリーズに、廉価版を設けています。昨年発売されたP30シリーズの中には「P30 lite」があり、その前のP20シリーズにも「P20 lite」がありました。いずれもそのコストパフォーマンスの高さから、キャリアにも採用されるほどで、売れ行きも上々でした。P40 lite 5Gは、その正当な後継機といえる端末です。

▲P40 lite 5Gを購入。その実力をレビューしていく

筆者も、この端末を発売日に購入……したと思ったら、紆余曲折あって届くのに1週間以上の時間がかかってしまいましたが、6月30日から徐々に使い始めています。まず驚いたのが、そのカメラ性能。これまでのliteシリーズは、トップクラスの端末と比べると、カメラがワンランク、ツーランクぐらい落ちるスペックでしたが、P40 lite 5Gに関しては、「これで十分」と思えるほどの仕上がりです。人物、風景、料理、夜景、草花等々、さまざまな場面で撮影してみましたが、どれもキレイに撮れています。

▲背面にはクアッドカメラを搭載。1つは被写界深度測定用で、実質的にはトリプルカメラ

▲ディテールの描写力も高く、青空の発色もいい

▲室内で撮った料理の写真も、瑞々しく撮れている

それもそのはず、P40 lite 5Gのメインカメラに使われているセンサーは、1/1.7インチとサイズが大きく、光を多く取り込みやすいからです。サイズが1/1.7インチのCMOSセンサーは、「P20 Pro」で採用され、「P30」や「P30 Pro」にも継承されています。P30、P30 ProからはRYYB配列になるなどの変化はありましたが、センサーサイズに限っていえば、約1年前のフラッグシップモデルと同等。ミドルレンジモデルでは考えられなかった仕様の1つといえます。

liteシリーズゆえに、Leicaブランドは冠していませんが、ファーウェイが得意とするAIでの処理は健在。特にインパクトが強いのが夜景モードで、明暗差が非常に大きなシーンでも、しっかり写し出せます。仕上がった写真は、強力なHDRがかかったような見た目になります。以下の写真がわかりやすいかもしれませんが、普通のスマホで撮ると白飛びしてしまうような路線図と、真っ暗な空が1枚の写真に同居しているのは、不思議な感覚を覚えます。しかもこれは、手持ちで撮った写真。同じシチュエーションでさまざまな端末を試していますが、ここまでのクオリティが出せる端末はなかなかありません。

▲夜景モードで撮った写真。暗い空と、明るい路線図がきちんと両立している

ただし、AIをオンにすると、被写体によってはどうしても色がコテコテになってしまう点は少々気になります。例えば、料理写真を他の機種で撮ったものと比べてみると、やや不自然に見えることも。以下に掲載したのは、ともにセンサーサイズが1/1.7インチのP40 lite 5Gと「Xperia 1 II」で撮った写真ですが、どちらがP40 lite 5Gなのかは、一目瞭然かと思います。ここまで加工する必要ないというときは、AIをオフにしておくといいかもしれません。それでも、P20 Proのころと比べると、自然になった印象はあり、実用度は増しています。

▲AIの補正が強すぎるのか、見比べると、色がコッテリしている印象も

▲同じ被写体をXperia 1 IIで撮った写真。こちらの方が現実に近い色合い

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カメラ以外では、この価格帯で5Gに対応しているのも、大きなサプライズといえるでしょう。筆者はドコモの5G契約になったSIMカードを入れていますが、純正のドコモ端末と同じ場所で、きちんと5Gに接続することが確認できています。まだまだ×4ぐらいエリアの狭い5Gですが、つながれば爆速になることも多く、ネットがサクサクに。動画などの閲覧も、数百Mbps出ていれば十分といえます。

▲5G対応で、つながれば数百Mbps出ることも

1つだけ注意しておきたいのが、アンテナピクトに出る5Gの文字。現状の5Gは、NSA(ノン・スタンドアローン)のため、いったんアンカーバンドと呼ばれるLTEにつないでから、データ通信時に5Gの周波数帯を束ねて通信する形式です。このアンカーバンドとして使うLTEのことをeLTEと呼びます。日本でキャリアから発売されている端末は、eLTEにつながると一瞬だけアンテナマークの横に5Gの文字が出て、データ通信が始まった段階で5Gをつかんでいないと4G+などに切り替わりますが、P40 lite 5GはeLTEにつながっていれば、必ず5Gの表示が出るようです。

今現在、大手3キャリアが5Gで運用しているのは、LTEより高い周波数帯で、電波を遠くまで飛ばすことが難しく、eLTEよりも範囲が狭くなります。そのため、eLTEに接続していながら、5Gで通信できないということも多々あります。ところが、P40 lite 5Gの仕様だと、アンテナピクトはeLTEにつながるだけで常に5Gになり、キャリア端末を使っているときより、5Gのエリアが広いように思えてしまいます。4Gであれ、5Gであれ、個人的には通信速度が速ければいいのですが、「5Gをどうしても試したい!」という目的の人は、注意しておいた方がいいでしょう。ちなみに、キャリア端末とP40 lite 5Gの端末は、どちらも標準化に則った仕様で、一概に間違いとはいえないことも付け加えておきます。

▲5G(NR)をつかんでない状態でも、アンテナピクトは5Gになってしまう

カメラと5Gで話が終わってしまいそうですが、ほかもザッとレビューしておきます。P40 lite 5Gは、チップセットに「Kirin 820」を搭載しており、これまでのliteシリーズより一段、処理能力が高いのも特徴。これまでの端末のレスポンスが悪かったわけではありませんが、ブラウジングの滑らかさや、アプリの切り替えの俊敏さなどは、ハイエンドモデルと見まごうほどです。AnTuTu Benchmarkのスコアは約35万点で、P30 Proよりわずかに劣る程度といったところです。

▲ミドルレンジを超えた処理能力の高さ

もはや、これをミドルレンジモデルと呼んでいいのかどうか分かりませんが、一方で、コストダウンを図っているところも使っているうちに何となく見えてきます。例えば、生体認証がその1つで、最近ではハイエンド端末はもちろん、ミドルレンジ端末でも画面内指紋認証が増えていますが、P40 lite 5Gの指紋センサーは、側面の電源ボタンと一体になっています。ぶっちゃけると、指を置きやすく、こちらの方が使い勝手はいいのですが……(笑)。

▲指紋センサーは、側面の電源キーと一体になっている

ディスプレイも、表示品質は高いと思いますが、有機ELではありません。microSDカードにも非対応で、ストレージを拡張したい場合は、どこで売っているのかいまいち分からない、ファーウェイの独自規格を採用した「NMカード」が必要になります。これはハイエンド端末も、ですが。細かな点では、バイブレーターがハイエンド端末のものより、やや大味な印象もあり、触覚フィードバックと呼べるには至っていません。

とはいえ、これだけの端末が4万円を下回る価格で登場したインパクトは絶大です。これでGMSが載っていれば、マストバイと断言していたでしょう。逆にいえば、HMSを搭載していることが最大の悩みどころです。もちろん、LINEは使えますし、大抵のGoogleサービスはブラウザ経由で利用できますが、GMSと比べると、まだまだ足りないアプリが多く、1台目端末として使うのは、かなりハードルが高い印象です。GMS端末で行えていたことが、できなくなってしまうこともあります。

▲Google Playストアの代わりに、AppGalleryが搭載されている

Googleのサービスも、ものによってはブラウザ経由だと非常に使いにくいことがあります。例えば、Googleカレンダーは使いものにならないぐらい見づらいですし、Googleフォトも手動で写真を同期させるしかなくなってしまいます。P40 lite 5Gをじっくり使ってみて、日ごろいかにGoogleに依存していたかを気づかされました。何となく思い出したのが、黎明期のスマホ。あの頃はアプリも少なく、色々と工夫しながら使っていたことを覚えています。

▲ブラウザ経由で使えるGoogleのサービスも多い

AppGalleryにはある程度、GMSから移植されたアプリもあり、当時に比べればはるかにイージーなのかもしれませんが、今のスマホほど整ってはいないのも事実。フロンティアスピリッツにあふれたガジェット好きは、逆にワクワクしてしまうかもしれません。かくいう筆者も、どうにか使えるようにあれこれ設定していくのが楽しいと感じた1人です。万人受けどころか、かなり人は選んでしまいますが、最近のスマホに飽きてきていた人は、チャレンジしてもいい1台といえるかもしれません。

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