Awesome City Clubが語る、トレンド「以外」に着目した覚悟

Awesome City Clubが語る、トレンド「以外」に着目した覚悟

海外と国内のトレンドを見事に吸収した音楽性、男女混成メンバーの華やかな見た目、さらには正式デビューまで音源を発売せず、SoundCloudで曲をアップし続けたという戦略的な面白さも話題を呼んで、一躍人気バンドの仲間入りを果たしたAwesome City Clubが、早くも2ndアルバム『Awesome City Tracks 2』を発表する。1st発表後も、クラウドファンディングでシングルを制作するなど、多角的な活動を展開してきたが、そんな中でフロントマンのatagiは「いい音楽って何だったっけ?」ということを見つめ直す必要性を感じていたという。その試行錯誤の末に完成した『Awesome City Tracks 2』は、早くも訪れたバンドの転換期をそのままパッケージしたような、熱量の高い作品に仕上がっている。そこで今回はatagiに加え、もう一人のフロントマンであるPORINを招き、改めてメンバーのパーソナリティーを掘り下げる共に、デビュー以降の半年間で起きたバンド内の変化について、じっくりと語ってもらった。

―前回の取材ではマツザカくんを中心にバンドのビジョンについて話をしてもらったので、今回は改めてフロントマンである二人のパーソナリティーを掘り下げたいと思っています。いきなりちょっと大きな話なんですけど、二人にとって人生の中で音楽が最優先事項になったのはいつで、それはなぜだったのかという話が聞いてみたいです。atagiくん、どうですか?

atagi(Vo,Gt):僕はメンバーの中で唯一の地方出身者で、地元が和歌山なんです。ギターを触りだしたのは小6くらいで、とにかくギターが上手くなりたかったので、高校卒業後に上京して音楽学校に進学しました。親に「音楽やるなら東京に行け」って言われたんですよね。「とにかく一番情報が早いところに行きなさい」って。

atagi

―東京で学校に通い、卒業後もバンド活動を続けていたんだと思うんですけど、その中で何か転機があったんですか?

atagi:23歳くらいのときに、母親にすごく心配されて、「あんたどうすんの?」って言われたんですけど、僕は何の責任感もなく「いや、バンド続けるよ」って言い返して、ずっとダラダラ生活してたんです。その時は本気でやってるつもりだったんですけど、今思い返すと全然でしたね。要は普通のフリーターでした。

―じゃあ、Awesome City Club(以下、ACC)が始まってから結構意識が変わった?

atagi:そうですね……でも、始まったばかりの頃は、まだそんなに変わってなかったかもしれないです。レコード会社が決まったり、実際にCDを出したりと、徐々に状況が変わって行く中で、だんだん意識が変わっていった感じですね。

―以前はソウルバーで働いていたそうで、それが音楽観に大きな影響を与えてるんじゃないかとも思うのですが。

atagi:めちゃくちゃでかいですね。ソウルバーで、曲名も知らないのに踊っていたり、会って5分も経ってない人たちがチークダンスをしていたりする光景を見ながら、音楽の表面的ではない、深い部分をすごく感じてました。音楽の教養もそこで学びましたし、音楽を本質的に捉えることって大事だなと気づき始めたのは、その頃でしたね。

―前回の取材で「刹那的なものはカロリーが重い」という話をしてくれたじゃないですか? それも、ソウルバーで働いて、音楽の本質に触れて、長く聴かれるものへの憧れが生まれたということなのかなって思ったんですけど。

atagi:憧れはあるんですけど、今思い返してみると、そういう発言には自分たちのポーズも多少あった気がします。ACCをやるまではオルタナっぽいバンドをやってたので、単純にその反動で逆の方向に行きたくなった気持ちが、そういう言葉になってたと思うんですね。でも、バンド活動がだいぶ板についてきた安心感から、ずいぶん肩の力が抜けて、今は言葉を選ばずに本心で思ってることを口にするのが怖くなくなってきました。

 Awesome City Clubが語る、トレンド「以外」に着目した覚悟

―ちなみに、PORINさんから見たatagiくんはどんな人ですか?

PORIN(Vo,Syn):最近素を出してきたなって。

―やっと?(笑)

PORIN:「これが本来のatagiくんなんだろうな」っていうのを垣間見れることが多くなりました。肩の荷が下りたっていうのもすごく伝わってきます。どんな人かというと、神経質な人だと思うんですけど、だからこそ、いい曲が書けるんだろうなって。

―では、PORINさんにとってはいつ音楽が自分の中の最優先事項になりましたか?

PORIN:音楽を中心に物事を考えるようになったのはホントに最近で、atagiくんも言ってたように、バンド活動が板についてきてからですね。活動していく上での責任感がどんどん増えてきて、何を求められていて、何をしなくちゃいけないかというのが、どんどん明確になってきているからなんです。

PORIN

―表現欲求は昔から強かったんですか?

PORIN:そうですね。昔から人前で何かするのは好きで、クラスの委員になって表に立ったり、ディベートとかでもバンバン発言するようなタイプでした(笑)。だから、表現の仕方はどんどん変わって行くけど、自己表現欲はずっと変わらずにあるんだろうなって。

―atagiくんから見たPORINさんはどんな人ですか?

atagi:いろんなことをどんどん吸収していくから、まだ思春期みたいな感じです(笑)。でも、意外とストイックな部分もあると思いますね。前は「私はどっちでもいい」みたいな感じだったんですけど、最近しっかりしてきたなって。

PORIN:小さい頃からやると決めたことに対してはストイックにやってきたので、覚悟が決まれば変わるんだろうな。

atagi:めちゃめちゃ真面目だね。

PORIN:真面目なんです(笑)。