稼働1年のメガソーラー発電所はどれくらい発電したか……特徴の違い

稼働1年のメガソーラー発電所はどれくらい発電したか……特徴の違い

2012年12月に東京電力が、自治体と共同で進めている太陽光発電プロジェクトの稼働実績について発表を行った。発表は、メガソーラー発電所の稼働1年を超えて、各発電所の発電実績がどれくらいだったのかについてのデータを公開している。発表資料によると、東京電力が現在進めているプロジェクトは、川崎市と共同のものが2か所(浮島、扇島)、山梨県と共同のものが1か所(米倉山)の3か所だ。メーカーによって想定発電量の計算方法は異なるが、それぞれ想定していた年間発電量を超える実績をだしているとのことだ。詳細を見ていこう。まず、各発電所の設備諸元をまとめると以下のようになる。●浮島太陽光発電所(川崎市)ソーラーパネルメーカー:シャープ最大定格出力:7,000kWp年間発電量(想定):7,400,000kWh年間発電量(想定)を一般家庭の年間使用量に換算:2,100世帯分年間発電量(実績):9,450,000kWh想定発電量あたりの実績:1.3倍定格出力1kWpあたりの実発電量:1,350kWh/kWp●扇島太陽光発電所(川崎市)ソーラーパネルメーカー:京セラ最大定格出力:13,000kWp年間発電量(想定):13,700,000kWh年間発電量(想定)を一般家庭の年間使用量に換算:3,800世帯分年間発電量(実績):15,100,000kWh想定発電量あたりの実績:1.1倍定格出力1kWpあたりの実発電量:1,162kWh/kWp●米倉山太陽光発電所(山梨県)ソーラーパネルメーカー:ソーラーフロンティア最大定格出力:10,000kWp年間発電量(想定):12,000,000kWh年間発電量(想定)を一般家庭の年間使用量に換算:3,400世帯分年間発電量(実績):14,400,000kWh想定発電量あたりの実績:1.2倍定格出力1kWpあたりの実発電量:1,440kWh/kWp3か所とも、発電量の実績値は想定発電量を上回っている。太陽光発電は、天候などの気象条件に大きく影響を受けるため、定格出力や設置面積、セルの出力などの定量的な比較だけで論じることは難しい。浮島は、3ヵ所の中で最小規模ならが、発電量の実績/想定比では最大の130%となっている。扇島は、他と比較すると効率が若干落ちるものの、発電の総量は最大規模である。米倉山は両者の中間的な位置づけといえるだろう。ただ、米倉山の発電所は他と突出した特徴がある。実発電量の効率のよさだ。最大定格出力に対する実発電量は、3ヵ所中トップ(1,440kWh/kWp)である。影響がありそうなのは、前述の通り、まず設置場所の気候条件だ。次にソーラーパネルそのものの性能が考えられる。調べると、川崎市のパネルはどちらのメーカーもシリコン多結晶型と呼ばれる太陽電池セルを利用している。米倉山のソーラーパネルは、CISと呼ばれる化合物系のセルを利用している(CISは人工衛星のソーラーパネルに多く採用実績がある)。面白いのは、一般的に発電条件が同じであればシリコン多結晶型の太陽電池のほうが発電効率が高く、出力も多くとれる。各メーカーのカタログなどを比較しても、単体の発電効率はCISよりシリコン多結晶型なのだ。しかし、実際にソーラーパネルとして現場に取り付けて実際に発電した量を調べると、CISパネルのほうが高い数値となる。ソーラーフロンティアや同社とCIS薄膜型太陽電池の実用化研究を行っていたNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のウェブサイトによれば、CISパネルは、温度特性、部分的な影に強い、日照を受けるほど出力特性が上がる性質がある、という3つの特徴があるという。シリコン系の太陽電池は、光を受けてパネルの温度が上がってくると、出力特性が落ちるという欠点があるのだが、CISはその落ち込みが少ない。また、複数の発電セルをつなげて1枚のパネルを構成するシリコン系のパネルは、部分的な影ができるとその分の出力が落ちてしまう。CISはパネル全体が1つのセルとなっているため、部分的な影の影響を受けにくい。日光を受けるほど出力が上がるというのは、暴露試験で確認された効果だそうだ。東京電力が発表した、3ヵ所のメガソーラー発電所についての発電実績から、それぞれの特徴を考察してみた。発表データをもって特性や性能などを断じることはできないが、実発電量という視点では、主流のシリコン系多結晶型パネルだけでなく化合物系のCIS薄膜パネルも十分な性能を持っているといえそうだ。家庭にソーラーパネルを導入する際に、こういったメガソーラー発電所の特徴を参照して、機種を選定するとよいだろう。

稼働1年のメガソーラー発電所はどれくらい発電したか……特徴の違い