描画性能と消費電力の違いに注目
主にゲームのプレイを目的として、旧世代のビデオカードから現行世代のものへアップグレードするときに重要なのは、目的とするゲームに合った性能を確保することだ。たとえば「World of Tanks」や「League of Legends」クラスの軽いゲームしか遊ばないのか、それとも「Fallout 4」や「ライズ・オブ・トゥームレイダー」を最高の画質で遊びたいのかによっても、GPU選びの基準は大きく変化する。前者ならGTX 750 Tiや950、Radeon R7 370といった“低価格ミドルレンジ”GPUを搭載したビデオカードで十分だし、後者の場合はGTX 980以上やR9 390以上のハイエンドクラス以上のGPUを搭載する製品がターゲットだ。とくに最近の画質重視のゲームはビデオメモリ搭載量が重要なので、重量級ゲームを高画質で楽しみたいなら、ビデオメモリは4GB以上欲しいところ。
次に消費電力についてだが、現行のビデオカードの消費電力は、過去の製品と比較するとあまり高くない。ゲームで負荷をかける程度なら、GTX 980 Tiを使う場合でも700W以上の大出力電源は不要なので、適切な出力の電源を使っているなら、さらに大出力の電源に乗り換える必要はない。ただ仮想通貨採掘のようにGPUの限界まで回すような処理をさせる場合、あるいは電源ユニットの+12Vの出力が小さいなどの設計面での古さがある場合は、電源ユニットもまとめて交換する必要が出てくる。
最後に、ゲームで遊ぶことを重視する上でもっともやってはいけない選択は、ゲーム向きでないビデオカードを選んでしまうことだ。GeForceならGT 730以下、RadeonならR5 240以下などのローエンドGPUを搭載する低価格カードは、今時のゲームにはまったく向いていない。現行世代のミドルレンジ以上を購入することが、1日でも長く使い続けるためのコツだ。
3DMark v1.5.915システム全体の消費電力GeForce GTX 980 Ti~GTX 970GTX 1080/1070という最速モデルが登場したが、それでも現行世代の上位モデルであることは間違いない。今後さらに価格が落ち込んだときが買い時と言えるだろう補助電力不要のGeForce GTX 950GTX 950の中でも補助電源不要のモデルは、環境を選ばないため人気。少しでも高い性能が欲しいなら補助電源が必要なモデルを選ぼうRadeon R9 NanoR9 Nanoはカードサイズが非常に小さく、ワットパフォーマンスもまずまず。入手性やお買い得感の改善でぐっと魅力的な製品となったCPU:Intel Core i7-6700K(4GHz)マザーボード:ASUSTeK Z170-A(Intel Z170)メモリ:Micron Crucial BLS2K8G4D240FSA(PC4-19200 DDR4 SDRAM 8GB×2)SSD:Micron Crucial MX200 CT1000MX200SSD1(Serial ATA 3.0、MLC、1TB)電源:Corsair RM650(650W、80PLUS Gold)OS:Windows 10 Pro 64bit 版アイドル時:OS起動10分後の値高負荷時:3DMark v1.5.915のFire Strikeデモ実行中の同一シーンでの最大値電力計:Electronic Educational Devices Watts Up? PRO
ミドルレンジは使い方に工夫を
描き込みの見事な重量級ゲームを遊びたいがハイエンドのビデオカードには手が出ない、と悲観することはない。PCゲームは画質設定を適切に変更すれば、結構遊べるものなのだ。たとえば推奨GPUがGTX 780と高いことで知られる「Fallout 4」も、低価格なミドルレンジGPU、GeForce GTX 950の環境では、フルHD解像度で、画質を“中”もしくは“高”設定にすれば平均60fps程度出る。これなら十分快適に遊ぶことが可能だ。
さらにパフォーマンスを絞り出すなら画質設定をチューニングしよう。とりわけ“影の質”や“アンビエントオクルージョン”といった設定を下げることで、パッと見の画質低下を抑えつつ効率的にフレームレートを稼ぐことができる。最終手段としてアンチエイリアスを完全にOFFにするという手もあるが、輪郭がチラついて見えるようになるため、最低限のアンチエイリアスは残すのが画質設定のコツだ。
ただ「Tom Clancy's The Divison」や「ライズ・オブ・トゥームレイダー」など一部の負荷がきわめて高いゲームだと、最低画質にしても60fps到達が難しい場合も。こうなると、もっとGPUをパワーのあるものに変えるか、解像度を下げるしかなくなってくる。
描画距離の調整も重要「Fallout 4」だと画質設定を下げると中~遠景の描画が省略される。遠くまでびっしり描画させたければ、GTX 960より上のGPUを選ぶべきだFallout 4:c2016 Bethesda Softworks LLC, a ZeniMax Media company.Fallout 4CPU:Intel Core i7-6700K(4GHz)マザーボード:ASUSTeK Z170-A(Intel Z170)メモリ:Micron Crucial BLS2K8G4D240FSA(PC4-19200 DDR4 SDRAM 8GB×2)SSD:Micron Crucial MX200 CT1000MX200SSD1(Serial ATA 3.0、MLC、1TB)ビデオカード:MSI GTX 980Ti GAMING 6G(NVIDIA GeForce GTX 980 Ti)、MSI GTX 960 GAMING 4G(NVIDIA GeForce GTX 960)、ASUSTeK GTX950-2G(NVIDIA GeForce GTX 950)、ASUSTeK STRIX-R9380-DC2OC-2GD5-GAMING(AMD Radeon R9 380)検証方法:一定のフィールドを移動中のフレームレートを「Fraps」で計測(垂直同期はドライバで強制OFF)電源:Corsair RM650(650W、80PLUS Gold)OS:Windows 10 Pro 64bit 版アイドル時:OS起動10分後の値高負荷時:3DMark v1.5.915のFire Strikeデモ実行中の同一シーンでの最大値電力計:Electronic Educational Devices Watts Up? PRO
旧PCへの組み込みで注意すべきこと
一点豪華主義でビデオカードをドンと買い換えるのはよいが、とくに旧型のPCをベースにアップグレードを図る場合には、スペックだけで新しい製品を選ぶのは避けること。まず物理的に入るかを確認しよう。ドライブベイなどが干渉した場合、古いケースだと解決策は皆無に等しい。また、幅の狭いケースの場合、カードと側板が接触したり、補助電源コネクタ分の空間が確保できないこともある。大型カードを使う場合には、CPUクーラー同様に高さへの注意が必要だ。
さらに、電源ユニットのPCI Express補助電源のコネクタ構成にも注意だ。とくにOCモデルの場合に必要な8ピン×2が古い電源には付いていない場合がある。変換・分岐ケーブルで回避することもできるが、消費電力/TDPの高いGPUへ移行する場合には、事前に確認しておくべきだろう。
ドライブベイに干渉する!カードが長過ぎてPCケースに入らないのはもっともありがちなミス。ベイ構成が組み替えられない古いケースだと手詰まりになりかねない補助電源コネクタは足りる?ハイエンド製品では補助電源を二つ必要とする場合も少なくない。電源ユニット側にコネクタがあるかどうか確認しておこう厚さや高さも要注意ハイパワーなGPUになるほどカード自体の高さや厚みも増す。補助電源コネクタを装着するとケースに干渉する場合もあるため、仕様ギリギリのカードの装着は危険だGTX 900世代 | GTX 700世代 | GTX 500世代 | R9 300系 | R9 200系 | |
ハイエンド | 250W(GTX 980 Ti) | 250W(GTX 780 Ti) | 224W(GTX 580) | 275W(R9 Fury X) | 290W(R9 290X) |
ミドルレンジ | 120W(GTX 960) | 170W(GTX 760) | 150W(GTX 560) | 190W(R9 380) | 150W(R9 270) |
[Text by 加藤勝明]
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