長く使ってると動作がモッサリしてくるiPhone。
少しでも長く使えるように、処理スピードを速くする一般的対処(キャッシュやCookieの消去、バックグラウンド更新の無効化、Siri提案・予測変換をやめる、OS再インストールするなど)を実践中の人も多いのではないでしょうか。
でもここにきて、先月くらいから、ちょっと変わった対処が出てきました。それは、「『言語と地域』でフランスを選ぶだけでなぜか速くなる」というもの。
「そんなんで速くなるわけない!」「速くなったとしてもタカが知れているよね!」とすぐ否定されましたが、今月BGRでも紹介しているので、まったくのデタラメというわけでもなさそうです。
iPhoneスロットル(CPU処理減速)裁判
どうしてフランスがからんでくるのかといいますと、これは、2017年暮れに「iOSをアップデートしたら古いiPhone(6、6S、SE、7)が急に遅くなった」「新しいの買わせるためにわざと遅くしてるんじゃ…」とRedditで騒がれて、Apple(アップル)が意図的スロットリングの事実を認め、米仏で訴えられたiPhoneスロットル問題に端を発します。
電池はスマホが古くなるとみな劣化しますが、特に旧式iPhoneはピーク電流引き込み処理が新型ほど効率よくできなかったため内部のコンポーネントを守る目的で強制終了になるリスクを抱えていました。そこでソフトウェア更新でなんとかしようと、Apple(アップル)はiOS 10.2.1リリース時に加えたのが、「ピークパフォーマンス性能の管理」というCPU処理を遅らせる機能。つまり新しいのに買い替えさせる意図はなく、あくまでもクラッシュ回避が目的というのが公式の説明です。
ただそれを事前に消費者に明示しなかったため、ユーザーは電池交換でサクサクに戻る望みがあるとは思わずに(電池をもたせるために処理を遅らせてるので電池はとりあえずもつ)新品を買う場合もあるというわけで、その責任などが問われて米仏に巨額の支払いを命じられる結果となりました。
賠償金額は、米国の消費者の集団訴訟に対して総額5億ドル(約549億円、昨年3月)、米33州とワシントンD.C.に対する和解金が総額1億1300万ドル(約124億円、昨年11月)。これを併せて、Appleは電池交換プログラムも展開。
フランスでは消費者団体に罰金2800万ドル(約31億円、昨年2月)近くを支払いましたが、アップグレード後に元のOSにダウングレードできないことなども問題になって、すったもんだの末、減速機能自体が無効になるという道をたどりました。だから地域の設定をフランスにすれば、意図的スロットルの心配はないし、動作が遅くなることもないというわけです。クラッシュが頻繁になるので、あんまりおすすめではないけれど、少なくとも理屈は通っていますよね。
巨額の賠償金を見て追随の動きも出てきました。
今年イタリアでは7300万ドル(約80億円)の支払いを求める集団訴訟が起きています。こちらは2014年から2020年までにイタリア国内でiPhone 6、6 Plus、6S、6S Plusを購入したすべてのオーナーに対し、電池交換代60ユーロ(約7780円)の賠償金の支払いを求める内容で、原告の消費者団体Euroconsumersは昨年末にも各国の加盟団体を通してベルギーとスペインで同様の訴訟を起こしており、イタリアのあとはポルトガルでも訴える構え。まだまだ続きそうです…バッテリーゲート。
一番効くのは電池交換
こうして地域設定のハックが話題になるまでスロットリング裁判なんてすっかり忘却の彼方でしたし、きっと初耳の人も多いはず。上に名前の出ている機種の動作が遅くて困っているならバッテリー交換で蘇る可能性大なので、いちおう頭の隅に入れておきたいですね。