アメリカ海洋大気庁(NOAA)主導の最新レポートは、2050年までに米国海岸線の海水位が10~12インチ(約25~30cm)上昇すると発表しました。このレポートもまた、気候変動が私たちの知る生活を破壊していると示しています。
これは、昨年の夏に気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が作成した膨大な報告書に対するNOAAの後書きといえます。IPCCの報告書には干ばつや嵐、熱波がより頻繁に起きていて、増加の一途を辿ると書かれていました。海面上昇の問題についても厳しい言葉で訴えています。
IPCCの共著者でRutgers Institute of Earth, Ocean and Atmospheric Sciencesの所長であるBob Kopp氏は当時レポーターたちに対し、「海面上昇は既に世界中の人々に影響を及ぼしていて、世界各地の多くの沿岸域では1960年以降沿岸洪水の発生頻度が倍近くになった」と語っていました。NOAAの最新レポートは、温室効果ガスの排出が引き起こした世界的な変化は米国に暮らす人々にも同様に影響を与えるのだと断言しているに過ぎません。
40cm以上も海面が上昇する場所も
レポートは米国内の海面上昇は地域ごとに異なると予想していて、ガルフコーストでは何と18インチ(約46cm)も上昇するかもしれないとか。悲惨な結論のほかに、中程度の洪水(NOAAいわく“概して害を与える”)は現在の10倍起きるようになり、大規模(“大抵は破壊的”)な洪水は発生頻度が5倍になると予測しています。もしそういった予測を変えるのなら、これまでとはやり方を変える必要があります。
2050年は遠い先のように聞こえますが、昨年だけで10億ドル規模の被害が出た気象災害は20件もあり、当然ながら多大な人的被害も出ています。上昇する海水位は既に米国内の沿岸地域に影響を与えていて、おそらくもっとも明白なのはフロリダ沿岸沿いの主要都市で、街路は大潮「キングタイド」のせいで定期的に浸水しています。水面の上昇によってどれほど変貌してしまうのかピンと来ない人は、世界各地の都市が海面上昇でどんな姿になるのかを示したシミュレーションをご覧ください。
今回のレポートは気候変動の緊急性と深刻さを示した衝撃的な注意喚起である一方、大事なのは私たちがどれだけ早く行動を起こすかです。これまで大気に放った排ガスのおかげで2020年から2100年の間に海面が2フィート(約60cm)上昇する可能性が高まっていると、NOAAのレポートには書かれています。ひどい話ですが、さらに悪化する可能性もあります。今、排ガスを抑制する行動を本気で起こさなければ、グリーンランドと南極の氷床は温暖化による深刻な影響を受けるかもしれません。氷床の予測はモデリングしづらいですが、最悪のシナリオだと米国の沿岸部は現在の予測よりもさらに0.5~1.5mの上昇、つまり2100年までに計1.1~2.1mも海面上昇するかもしれないのです。もしそうなってしまったら…全く別の世界になってしまいます。
Source: NOAA's Ocean Service, NOAA Climate.gov,