使ってわかったこの手軽さ。Touch IDを初めて使ったときの感覚と似てますよ。
iPhoneが無線充電(Qi規格)に対応したことで、今まで以上に無線充電器への関心が高まっています。さまざまな形や仕様、価格も2,000円のものから1万円以上するものまであるわけですが、その中でベストに輝くのはどれなのか? そして、有線充電器とどう張り合うのか? 充電速度を測りながら、使用感もまとめて比較検証してみました。
今回比較したのは、7つのQi規格の無線充電器と、2つのLightning端子の有線充電器です。無線充電器はどれも特色のある製品となっていますが、充電能力によって大きく2つに分類できます。iPhoneの高速充電(7.5W)に対応している機種と、通常速度(5W)の機種です。対応している機種は相応のお値段がするので、コスパにも注目。有線充電器はどちらもApple純正品で、iPhone付属のものと、高速充電(29W)に対応しているものになっています。付属品という最強コスパが立ちはだかる中、有線の高速充電器はあらゆる意味で別格でした。
比較する充電器
ではまずは、今回の比較に参加する充電器の紹介です。
ワイヤレス(通常)
1. Anker PowerPort Wireless 10:2,499円
2. Spigen F302W:1,990円
3. ELECOM W-QA01BK:3,000円
4. Panasonic QE-TM102:3,689円
5. YOGEE パワーバンク:6,980円
ワイヤレス(高速充電)
6. mophie wireless charging base:6,980円(税別)
7. Belkin Boost Up Wireless Charging Pad:6,980円(税別)
有線
8. 5W iPhoneの付属品
9. 29W USB‑C電源アダプタ+USB-C - Lightningケーブル:5,200円+2,800円(税別)
*価格は掲載日時点
9モデルを一挙比較
ということで、さっそく充電速度を比較。テスト方法はシンプルです。充電0%のiPhone Xを、それぞれの充電器で2時間充電し、15分間隔で充電の%を記録しました。このデータを元に、充電容量の経過をグラフ化しています。ご覧ください。
米Gizmodoが検証した記事からもわかってはいましたが、やはり有線の29Wの高速充電は圧倒的ですね。0%から55%までたったの30分。2時間でほぼ満充電。他を寄せ付けない圧巻の速度です。そして、こちらもやはりというべきか、次に多く充電できていたのは付属の有線充電器でした。有線のワン・ツーフィニッシュという味気ない結果ですが、本題はここからです。
無線充電器達を2週間使ってみて一番感じたのは「利便性の高さ」でした。グラフからもわかるように、充電速度では有線にはかないません。しかし、それでも無線充電器が購入されるのは、「2つ目以降の充電器」としての機能を満たしているからなんです。これは誰しもがやっていることだと思うんですが、寝ている間にスマホの充電しますよね。それを無線充電器に替えると、元々使っていた充電器を開放できると同時に、置くだけで充電できるという、ベッドサイドにふさわしい手軽さが実現できます。一例に過ぎませんが、とても理にかなった使い方だと感じました。
結局、(使い方にはよるものの)ゆっくりめな充電速度は大して気にならないというわけです。いくらゆっくりめとはいえ、何時間もあれば(睡眠中に)満充電できてしまうからです。そして、なにげに嬉しかったのが、元々使っていた付属の有線充電器が外出用のバッグに入れておけるようになったこと。外出先でもコンセントさえあれば充電できるという安心感があります。もちろん、モバイルバッテリーの方が確実ですが、大きさと軽さが違いますし、いちいち充電する必要がありません。
そんなわけで、無線充電器を購入する時は「使い勝手」や「コスパ」などが評価基準になってくると思います。今回集めた無線充電器は7つありますが、驚くほどに使用感が違いました。各機の使用感をまとめてみたので、ご参考にどうぞ!
mophie wireless charging base:無線充電器最速
Apple公式サイトで販売されている高速ワイヤレス充電対応(7.5ワット)の機種だけあって、非常に高い仕上がりでした。重量感があって安定していますし、スマホを置くパッドの部分もしっかりスベリ止め加工がしてあります。充電インジケーターの白色LEDが下向きなのもオシャレ。なので、これがベスト!と言いたいんですが、価格の高さが玉にキズ。6,980円(税別)は安い機種の倍くらいなので、それだったら安いのを2つ買うことを選んでもいいかなと。ただ、充電速度は無線の中では一番(2時間で10%の差)なので、速度が一番大事という方はこれ一択です。
Belkin Boost Up Wireless Charging Pad:白い方の高速ワイヤレス
Apple公式サイトで販売されている、もう一つの高速ワイヤレス充電対応(7.5ワット)の機種です。しかし、残念ながらほぼすべてにおいてmophieに劣っています。充電速度もそうですが、上向きの緑色LEDが安っぽいのと、パッド上面が3パーツ構成なせいで隙間に汚れが溜まってしまいそう。それでいて同じ価格(6,980円、税別)なので、白じゃないとダメという方以外は買う理由がないといった印象。
以下の製品は通常速度の無線充電器で、コンセントの接続にUSB Type-AのACアダプターが別途必要となります。iPhone付属のアダプター(出力:5V/1.0A)でも事足りますが、最低でも5V/2.1A出力のものが望ましいです(上のグラフは5V/2.1Aのアダプターに接続して測定)。その理由は、充電速度の差。アダプターの出力でどのくらいの違いが出るのか、Spigenの無線充電器を使って検証しました。
そんなわけで、5V/2.1A出力のACアダプターが転がっていたらそれがベストなんですが、新たに購入しなければならない場合は、大体プラス数百円から千円と考えてください。
Anker PowerPort Wireless 10:コスパ最強
Ankerらしく、安くて品質が良いです。パッドはラバー加工で置きやすく、良い意味でmophieの兄弟といった感じ。充電インジケーターは下向きに360度全体に配置してあるので、非常に分かりやすいです。2,499円でこのクオリティーは買い。
Spigen F302W:滑り台 (真のコスパ最強?)
Ankerと同じサイズ感で1,990円なのはとても良いんですが、パッドが妙に滑りやすいプラスチックで出来ています。これは実際に測って計算したんですが、たった0.1°傾くだけでiPhone Xが滑り落ちます。片側が紙一枚分高いだけの傾きといえばその滑りやすさが伝わるでしょうか。iPhone Xがツルツルしているのもありますが、なんにせよ大事なスマホを置く気にはなれません。でも傾かせない・滑らせない自信がある方は、こちらが真のコスパ最強になります。薄いスベリ止めを貼れば良いのかな。
ELECOM W-QA01BK:闇属性の勇者向け
まず、めちゃくちゃ小さいです。mophieやAnkerの1/3といった感じ。なので、机が狭かったり、トラベルに持っていきたいという方は重宝すると思います。あと、暗闇で過ごしている方も重宝しそうです。充電機が通電していればインジケーターが常時点灯しているので、部屋が暗くてもどこにあるか一目瞭然。光の点がパッドの真ん中なのもいいですね、そこを基準にスマホをおけば良いので。ただ、置くと同時にインジケーターが隠れてしまいます。スマホを探すときは、無難に部屋の電気をつけるか、「Hey Siri」の呼びかけに応じて画面がつくように設定しておいたほうが良さそうです。また、充電中に誤って何かをぶつけてしまうとパッドの小ささも相まってすぐ落ちてしまうので、心の強い方にしかオススメできません。お値段は3,000円。
Panasonic 無接点充電パッド QE-TM102-K:大きいのに狭い
唯一の大手国産メーカー。2014年発売の古い機種だから仕方がないのかもしれませんが、デザインが無骨で大きい割に充電できる範囲が狭いです。置いてから位置を調節しなければならないことが多かったため、「置くだけ」の利便性が薄れてしまっています。お値段も約3,700円となかなかするので、何か特別な理由がない限り別の充電器を探したほうが良さそうです。
YOGEE YG-8000-GY:変態枠
無線充電が好きな方は必買。こちら8,000mAhの容量があって6,980円するモバイルバッテリーなんですが、なんと無線充電パッドを装備しています。どこでも無線充電したいんだ!という欲望を満たしてくれます。無線充電ここに極まれり、と思ったんですが、これで終わりじゃありませんでした。まだその先があったんです。なんと、これ自身の充電も無線でできるんです。もちろん、もう一つの無線充電パッドが必要になるわけですが、究極の利便性を求めるなら必要経費ですよね。
そして、すべてが揃ったときに最終奥義があることに気が付きました。「カメの親子」です。電源につながれた無線充電器でYOGEEを充電しつつ、YOGEEの無線充電パッドでスマホを充電するんです。ただ、これはあまり推奨できません。バッテリーは充電と放電を同時にすると劣化が早まってしまいますし、無線充電は有線と比べて熱が多めに発生します。YOGEEをパッドとスマホで挟んでしまうと、熱がこもって危険なんです。
でも、できるか気になったので試しました。結論から言うと可能ですが、YOGEEに妙な癖があるので以下の手順を踏む必要があります。まずYOGEEの電源を入れてから(別の)無線充電器に置き、YOGEEの充電インジケーターが落ち着くまで待ちます。そして、その後にスマホを一番上に置くと、スマホ、YOGEEの順番に充電が完了していきます。くれぐれもやらないでくださいね!
まとめ
無線充電器たちを比較レビューした結果、コスパで選ぶならAnkerで、お金に糸目をつけず速度を求めるならmophie、という結論になりました。ただ、視野を広めると真の速度チャンピオンである29Wの有線充電器がいるので、本当に速度を求めている方はこちらがベストです(アダプターは5,200円、ケーブルは2,200円)。
また、人によっては別の機種のほうがオススメ、という場合もありました。例えばSpigenはパッドが滑りやすさを気にしない方にはオススメできますし、ELECOMはトラベラー・机が狭い方・部屋が暗い方などにオススメです。無線充電を極めたい方はYOGEE+mophieですね。
あと、Appleも今年中に「AirPower」という無線充電器を発売するので、Apple製品で固めたい方はこちらを待つのも一手ですね。手に入り次第レビューしたいと思います。
Photo: ギズモード・ジャパン, 西谷茂リチャード(西谷茂リチャード)